【箱根・一の湯本館】チェックインから就寝までの湯と食の夜を丁寧に辿る(第1部)

【箱根・一の湯本館】チェックインから就寝までの湯と食の夜を丁寧に辿る(第1部)

はじめに

箱根の塔ノ沢に佇む、一の湯本館。古くから箱根湯本の湯治場として知られるこの宿に、私と妻は宿泊に訪れました。

娘が生まれる以前の二人だけの旅─湯に浸かり、部屋の湯に戻り、食事をゆっくりと、という単純だが濃密な時間を過ごすためです。

到着してから就寝まで、繰り返し味わったのは「湯→酒→湯→食→湯」という、温泉宿の理想的なリズムでした。

以下はその一夜の細部。まずは施設と湯の概要、つづいて私たちが実際に巡った“3つの湯”の詳細、そして食事へと進みます。湯の表記や貸切利用の運用などは公式案内に基づいていますので、利用の際の参考にもしてください。

施設の第一印象と客室(さつき)について

塔ノ沢の細い道を抜け、宿の門構えをくぐると、木の香と歴史を感じさせる佇まいが迎えてくれます。

フロントを抜けて案内されたのは「さつき」という名の客室。露天付の温泉客室で、窓を開ければ早川渓谷の緑と水音が耳に届く―旅情をじんわりと高める立地でした。

客室は和の落ち着きを残しつつ、凛と整えられており、到着直後に浴衣へ着替え、まずは部屋の湯へ入る─といった動線が自然に成立します。

客室風呂があること自体が、私たちの滞在を一段と自由にしてくれました。客室露天は確実に旅の価値を格段に上げてくれます。

私たちが巡った「3つの湯」―それぞれの印象

一の湯本館は複数の浴場を擁し、貸切家族風呂なども用意されています。私たちは滞在中、以下の3つの湯を順に楽しみました(大浴場+貸切家族風呂+客室の湯)。

それぞれ感想を交えて詳述します。

1)客室の温泉(さつきの客室湯) — 「いつでも戻れる安心感」

客室に備えられた温泉は、滞在の利便性を飛躍的に高めます。

食事の前後に何度も短時間で湯に浸かれるのは最大の贅沢。小露天とは言いつつも、部屋から出ずに湯を楽しめる開放感とプライバシーは格別で、湯上がりには布団や椅子でゆっくりと体を冷ます余白がありました。

旅先での「自分の湯」を持つことの幸福を、ここで改めて噛みしめました。

2)大浴場「金泉の湯」的な内湯 — 「しっかりと身体に効く、安定感のある湯」

一の湯本館には大小の大浴場があり、時間帯により男女入替制で利用できます。

私たちがまず向かった大浴場は、内湯の落ち着きと広さを併せ持つ浴室で、湯はアルカリ性単純温泉のやわらかさがあり、長時間浸かっても乾きにくく、湯上がりの肌のしっとり感が好ましかったです。

体の隅々までじんわりと温まり、旅の疲れがすっと抜けていく感覚がありました。

3)貸切家族風呂(大理石の風呂) — 「ふたりだけの静かな湯」

本館には無料の貸切家族風呂があり、古い大理石を用いた風呂など、趣のある空間が用意されています。

私たちはここでプライベートな時間を過ごし、外気や鳥の声を聞きながら湯に浸かりました。

貸切家族風呂は予約制となりますが(当日フロントでの先着受付が基本)、滞在中は比較的利用しやすく、気兼ねなく入れるのが魅力。

家族やカップルでゆったり使える設えは、宿泊の満足度を確実に押し上げてくれます。

3つの湯に共通する感想(総論)

どの湯も「箱根らしいやわらかな湯質」を持ち、泉質はアルカリ性単純温泉の柔らかさを感じさせます。

湯上がりに肌がつっぱらない点、体の芯から温まって冷めにくい点は滞在の満足度を高める重要な要素でした。

貸切が無料で利用しやすい点や、大浴場が入れ替え制で楽しめる設計は、湯めぐり好きには嬉しい配慮です。

夕食 — 写真のお品書きを元に一皿ずつ丁寧に味わう

さて、湯からあがると待っているのはこの夜の大きな楽しみ、夕食。

いただいたお品書きをもとに、各皿の印象をできるだけ忠実に記します。

お品書き:酒肴3種盛り/摘み上げ湯葉の冷し小鉢/銀鱈の自家製西京漬け焼き/茄子のはさみ揚げおろしポン酢/名物 特選豚の美味出汁しゃぶしゃぶ/香の物・御飯/氷菓子:洋梨のシャーベット

ひと皿ずつを丁寧に味わうことは、それ自体が旅の儀式です。

● 酒肴三種盛り — 旅の一杯を誘う華やかさ

最初に出された三種盛りは、旅館の「飲ませる」技術が詰まった皿。つぶ貝と三陸若芽のこんぶ醤油和えは歯ごたえと海の旨味があり、蟹の新丈(蒸し物)と明太ソースは甘みと辛みのコントラストが良い。鰻と牛蒡の山椒風味煮は、ご飯にも酒にも合う濃度で、小皿ながら食事の期待値をぐっと上げてくれます。ここでまず、冷えたビールを一口─湯上がりの一杯のありがたさが身体にしみます。

● 摘み上げ湯葉の冷し小鉢 — 口当たりのやさしさ

湯葉の柔らかな食感に、ホールコーンやきゅうりのシャキッとしたコントラストが効いています。生クリームをほんの少し使ったソースが全体をまろやかにまとめ、前菜の列に温度変化をつける仕事をしていました。箸休めとして、良いタイミングで配される一皿です。

● 銀鱈の自家製西京漬け焼き — 香ばしさと味噌のコク

銀鱈は脂が乗っており、西京味噌で漬けられた香りがふんわり。レンコンチップスの食感が脇役ながらアクセントとなり、味噌の甘みが酒にも白飯にも寄り添う、旅館の“安定する一品”です。個人的にはここで日本酒にスイッチすることが多く、温かい飯が欲しくなる皿でした。

● 茄子のはさみ揚げ おろしポン酢 — 揚げ物の余韻をさっぱりと

茄子に鶏肉か魚介のすり身などがはさまれて揚げられ、おろしポン酢でさっぱりと仕上げられた一皿。揚げ物の油感を大根おろしがうまく切ってくれるため、会席の流れが重くならない工夫が行き届いています。

● 名物:特選豚の美味出汁しゃぶしゃぶ — メインの満足感

一の湯の看板メニューのひとつが、この「特選豚の美味出汁しゃぶしゃぶ」です。甘みのある豚肉をさっと出汁に通し、野菜とともに愉しむ―出汁の旨味が素材にまろやかに寄り添い、〆に中華麺(別注)を入れるとまた違った風味を楽しめるとの案内もありました。これはボリューム・満足感ともに、宿泊のメインをしっかり支える一皿です。

● 香の物・御飯、氷菓子(洋梨のシャーベット) — 静かな締め

ご飯と香の物、赤出汁あたりで一度落ち着き、その後に洋梨のシャーベットで爽やかな余韻を残す構成。デザートが果物のシャーベットである点は、口の中をさっぱりとさせてくれて、湯で温まった身体に清涼感をもたらします。

食後の過ごし方:湯→酒→湯の反復

夕食後も私たちの行動パターンは変わりません。

部屋に戻って客室の湯に浸かり、ビールや日本酒を傾け、再び大浴場へ出かける。

湯上がりはお気に入りのロビーへ。自動販売機で冷えたビールを買い、一息をつく。

夜の箱根の静けさと湯の温かさが交互に押し寄せ、時間の感覚が少し曖昧になるような幸福感が続きます。

寝る前にもう一度客室の湯に短く浸かり、窓の外を眺めていると、自然と深く眠りに落ちました。

小さな実用メモ(読者の皆様へ)

  • 貸切家族風呂の利用法:当日フロントで先着順の受付が基本。混雑時は譲り合って利用してください。
  • 大浴場の入替:入れ替えがあるため、利用時間や男女割り当てはチェックイン時に確認するのがよいでしょう。
  • 食事のスタイル:会席系をベースにした創作和食のコース。プランによってはフリードリンクが付くものもあるようです(プラン確認を推奨)。

最後に(この夜の総括)

箱根の古い湯治場の空気を、少しだけ現代の居心地に整えた一の湯本館。

客室の温泉を軸に、大浴場や貸切湯を行き来し、丁寧に作られた夕食をゆっくりと味わう―その一連の行為が、旅の核をしっかりと満たしてくれます。

湯には柔らかさと確かな効能があり、食事は過度に飾らずに素材と出汁で勝負している。

こうした構成は、箱根の“王道的”な宿の美点がよく残されていると感じました。

次回は一の湯の朝を特集したいと思います。

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