【エスタミネ・コゼット】デカンタと前菜盛り合わせの一夜

【エスタミネ・コゼット】デカンタと前菜盛り合わせの一夜

はじめに

前回に続き、今回も小田急沿線の隠れ家フレンチ「エスタミネ・コゼット」へ。

訪れるたびに、その日ごとの“飲み方”を楽しませてくれるのがこの店の魅力。今回は特に「デカンタでワインを頼む」ことの良さを再確認した夜でした。

デカンタ1200円という贅沢

注文したのは、デカンタ・スパークリング(1,200円)とデカンタ・白ワイン(1,200円)。

合計2,400円で十分に満足できる内容。コストパフォーマンスという点で、この「デカンタ1,200円」は非常におすすめしたいです。

なぜなら、種類はすべてマスターのチョイスに委ねられるのですが、これが本当に外れがない。むしろ「毎回、自分では選ばなかったであろう美味しい一本」との出会いがあります。

今回は白ワインが素晴らしかったです。

イタリア・マルケ州の「ヴェルデッキオ(Verdicchio)」。緑がかった透明感ある色調と、爽やかで清涼感のある香り。柑橘のニュアンスとともに、ほのかにアーモンドを思わせる余韻があり、料理との相性も抜群でした。

前菜おすすめ盛り合わせ

今回も「前菜おすすめ盛り合わせ」(2人前・1,200円)を注文。これは、毎回安定して楽しませてくれる一皿です。

プレートの内容は、その日の仕入れによって少しずつ変わるのだが、この日の盛り合わせは特に彩り豊か。

  • ラタトゥイユ風の温野菜(中央の小鉢)
    トマトやパプリカの甘みがしっかりと引き出され、ワインを進ませる。
  • ケークサレ(左上)
    ふんわりとした食感と、ほんのり効いたチーズのコク。
  • 生ハムとポテトの組み合わせ(右上)
    塩気と食感のコントラストが絶妙。
  • パテ・ド・カンパーニュ(右下)
    しっかりとした旨みと香草の香り。マスタードを添えていただくとより深い味わいに。
  • 自家製ピクルス(下部)
    赤・黄・緑と色鮮やか。酸味が口をリセットしてくれる。

どれも手が込んでいて、これだけで軽いワイン会が成り立つような内容。盛り合わせの良さは、いろいろな味を少しずつ楽しめることに尽きます。

一品ずつの味わいの感想とワインとの相性

中央のマリネ(ナスと彩りパプリカ)

  • テクスチャ:ちょっととろっとしたナスと弾力のあるパプリカ。オイルとビネガーが全体を纏める。
  • 味わい:旨味×ほのかな甘み×酸味のバランス。
  • ペアリング:Verdicchio のフレッシュな酸とミネラリティ(石のようなニュアンス)が、このマリネの油分と甘みを切り、口をさっぱりとリセットしてくれます。

パテ・ド・カンパーニュ(粗挽きのテリーヌ)

  • テクスチャ:しっかりした肉の粒感、脂の層。マスタードや酸味のある添え物で切るのが定石。
  • 味わい:豚肉のコク、スパイス、脂の余韻。
  • ペアリング:Verdicchio は意外に「肉の脂」を切る力があるタイプの白です。特に「トーステッドアーモンド」やほんのりとした旨味があるヴェルディッキオは、パテの塩気と脂に寄り添いつつ、後口を整えます。

生ハムで巻いた前菜(右上)

  • テクスチャと風味:生ハムの塩味とやわらかな脂、巻かれた具材のフレッシュさ(例えばチーズや果実)が対照を作る。
  • ペアリング:スパークリング(デカンタ)を少し入れておくと、ハムの塩味が泡の酸で洗われ、次の一口が軽く感じられます。ただし、今回の白(Verdicchio)もハムにマッチします。

ケークサレ(塩味のパウンドケーキ)

  • しっとりして香ばしさがあり、油分があるためワインは酸のあるものが合う。
  • ペアリング:Verdicchio の柑橘やリンゴに似たフルーティーさと、ミネラルな切れ味がケークサレの油を受け止めてくれます。

ピクルス類(白いスプーン)

  • 役割:口直し、酸味の提供、皿全体のバランス調整。
  • ペアリング:酸味が強いピクルスはスパークリングとも好相性ですが、Verdicchio のシャープな酸も合わせやすい。とくに塩味と合わせると白の“苦み→アーモンド風味”が引き立ちます。

今回の白ワイン(Verdicchio)について〜テイスティング

今回のテイスティング印象(コゼットでの1杯)

  • 外観:やや緑がかった淡いストローイエロー。
  • 香り:白い花、青リンゴ、ライムの皮、わずかなハーブ感。
  • 味わい:口当たりはシャープでキレがあり、中央にフルーティーな厚み、フィニッシュに軽いアーモンド(ビターアーモンド)のニュアンス。酸がしっかりしていて前菜の塩気を洗い流す。Verdicchio の良さがストレートに出ていました。

デカンタ・スパークリングについて

写真メニューに「デカンタ・スパークリング」があるのはちょっと珍しいと思います。

一般にはスパークリングはボトルのまま、あるいはグラスで提供することが多いのですが、デカンタに移すことで香りが開き、泡が柔らかくなる(炭酸が多少抜ける)ため、飲みやすさを優先する場合に行われることがあるとされているようです。つまり“泡を残したまま香りをやわらげる”狙いで、味わいの輪郭を出すための店の工夫だと考えられます。短時間(5〜30分ほど)ならバランスを保ちつつ香りが開くこともあるので、提供方法としては合理的です。

(注:スパークリングのデカンタは一般的ではないため、好みは分かれます。もし「泡をしっかり楽しみたい」ならグラスでの提供を希望すると良いです。)

最後に — 小さな店での“大きな出会い

エスタミネ・コゼットのような店では、“デカンタで少しずつ楽しむ” ことが料理との出会いを豊かにしてくれます。今回の3,600円の組み合わせは、ワインを試す楽しさ、前菜の多様性、そしてマスターの“選球眼”を一度に楽しめる良いコースでした。特に今回のヴェルディッキオは、前菜の塩気と酸味にぴたりと寄り添い、ついついもう一杯と手が伸びる美味しさでした。

まとめ

この日の会計は、

  • デカンタ・スパークリング:1,200円
  • デカンタ・白ワイン:1,200円
  • 前菜おすすめ盛り合わせ(2人前):1,200円
    合計:3,600円

ワインの質と前菜の充実度を考えると、改めて非常に満足度の高い内容。

特に「デカンタで1,200円」という頼み方は、コゼットならではの楽しみ方。自分の好みを超えて、新しいワインの世界に触れさせてくれる。こうした偶然の出会いが、この店の魅力なのだと思います。

また次回も、この「デカンタお任せ」の愉しみを味わいに来ます。

値段とコスパの話 — デカンタ1,200円をすすめたい理由

  • 合計3,600円(2人分想定)は、前菜+ワイン2種(デカンタ)の構成として非常に良心的。
  • デカンタの良さ:マスターが選ぶワインを少量ずつ試せる点。ボトルを頼む心理的ハードルが下がり、普段選ばない産地や品種に触れられる利点がある。今回のヴェルディッキオのように「良い出会い」があると、店に対するリピート意欲が高まります。
  • 1人あたり1,800円でこの満足度は、都心のビストロでは十分お値打ちと言えます。

具体的な楽しみ方(私のおすすめオーダー順)

  1. 到着後すぐにデカンタ・スパークリング(¥1,200)を小さめのグラスで一杯。アペリティフ代わりに。泡でまず舌をリセット。
  2. 前菜盛り合わせ(2人前 ¥1,200)をシェア。中央のマリネ→ピクルス→パテ→ケークサレの順で少しずつ楽しむ。
  3. 前菜の中盤でデカンタ白(Verdicchio)(¥1,200)へスイッチ。塩気のあるテリーヌにフレッシュな酸を合わせ、箸休め的にピクルスをはさむ。
  4. もし気に入れば、同じデカンタ白をもう一杯追加して、メインやチーズへつなげる(デカンタ制は量の調整がしやすいのが利点)。

英語メモ(ワイン&料理で役立つ単語)

  • decant(デカント/デキャンタ):ワインを抜栓して別の容器に移すこと。
  • sparkling(スパークリング):発泡性のワイン(シャンパンやスプマンテ)。
  • antipasto / starter(アンティパスト/スターター):前菜。
  • terrine / pâté(テリーヌ/パテ):肉や内臓を使った保存性のある前菜。
  • Verdicchio(ヴェルディッキオ):イタリア・マルケ州を代表する白ワイン。特徴は“green-ish(緑味)”なフルーツ香とアーモンドの余韻。

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