第三話:川沿いにて

第三話:川沿いにて

昼の陽射しは、まるで鏡をなぞるように川面を滑っていました。

流れは一定のようでいて、近くで見ると細かなうねりを繰り返し、そのたびに光の反射が形を変えます。
時おり水面をすべる風が、光の帯をやわらかく揺らしました。

川沿いの道は、夏の真昼らしい熱を帯びています。アスファルトがゆらりと揺れて見えるほどの熱気が漂い、歩くたびに靴底から小さな温度が返ってくるようです。

街路樹が一定の間隔で立ち並び、葉の影が細かなまだら模様を地面に落としています。木陰を抜けるたび、太陽の光が鋭く目に差し込み、そのたびにほんの少し肩をすくめました。

風は強くはありませんが、川の流れに沿ってやってきます。水の上を渡ってきた空気は、街の中の風よりもどこかやわらかく、肌に触れると熱をほんの少し持っていってくれるようです。

その感触に気をよくしながら、私は川沿いの遊歩道をゆっくりと歩きました。

やがて、視界の端にベンチが見えてきました。木製の背もたれは陽を浴びて少し色があせ、金属のひじ掛けには、さわれば熱を感じそうな光沢がありました。

腰を下ろすと、足元の芝生の向こうで、小さな水鳥が川辺をついばんでいます。羽毛の白さが陽に透け、まるで淡い光をまとっているようでした。

ふと、喉の奥に冷たいものを通したいという欲求がはっきりと立ち上がってきます。このまま風と光に包まれ続けるには、何かが足りない気がしました。立ち上がり、近くの売店へと足を向けます。

冷蔵ケースのガラス戸を開けると、ひやりとした空気が腕にまとわりつきます。中には缶ビールや清涼飲料、そしてその中に、銀色に輝く細身の缶がありました。ジンソーダ。その響きに、今日の陽射しの下で飲む自分の姿が鮮やかに浮かびます。

缶を手に取ると、表面には無数の小さな水滴がついていました。それは冷えの証拠であり、そして今の私にとって抗いがたい誘惑そのものでした。会計を済ませ、ベンチへ戻ります。

プルタブを引くと、「シュッ」という軽やかな音が響き、その直後にジン特有の香りがふわりと漂います。一口目、炭酸の鋭い刺激が舌の上で弾け、ジンのボタニカルな香りがゆっくりと広がります。ほんのりとした柑橘の香りが鼻を抜け、川沿いの風と混ざっていく瞬間は、何とも言えず贅沢でした。

ジンソーダの冷たさは、陽射しの熱をやわらげ、体の奥まで届くような感覚をもたらします。川の流れを再び眺めれば、そのきらめきは先ほどよりも柔らかく見えます。

遠くで子どもたちが水辺ではしゃぐ声、時おり飛び立つ鳥の羽音、そして風が木の葉を揺らすささやき。そのすべてが、ジンソーダの透明な味わいと溶け合っていくようでした。

そして気づけば、缶はほとんど空になっていました。最後の一口をゆっくりと喉へ送り込み、深く息をつきます。

川面に映る太陽は、午後の傾きをほんの少しだけ感じさせながらも、まだ力強く輝いていました。

今日のこの時間は、確かに私の中に刻まれる。そんな確信を覚えながら、缶を握った手の冷たさをもう一度確かめました。

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