【土肥・頬杖の刻】2泊3日の旅(第3部)

【土肥・頬杖の刻】2泊3日の旅(第3部)

はじめに

2024年4月18日(木)ー朝食、最後の湯、チェックアウト、下田へ、帰路の魚仕入れ、自宅での捌き仕事ー

最終日。旅の終わりは、ゆっくりとではありますがやってくるもの。

最終日の朝、窓外はあいにくの早朝霧か薄曇りが残っていたものの、刻一刻と変わる海の色に目を細めながら、私はいつものように朝風呂へと向かいました。

主に伝えたいこととしては「朝食のエッグベネディクトの満足感」と、「帰ってからの魚捌きの苦労と喜び」。

この二つの相反する快楽―朝の軽やかさと、手仕事の泥臭さ―を同時に感じたことが、私にとって旅の総まとめのように思えます。

朝食 — エッグベネディクトの満足

二日目の朝、朝食会場へ。

私は迷わずエッグベネディクト。前日も食べて「次の日もこれにしよう」と妻と話が合致した皿。

会場に運ばれてきたその皿は、見た目からして誠実で、作り手の手間が静かに伝わってきます。

マフィンは軽くトーストされ、表面はさっくり、中はふっくら。そこにベーコン、温度管理の行き届いたポーチドエッグ、そしてオランデーズソースがたっぷりと。

ナイフを入れると、黄身が溶け出してマフィンに浸透ーその瞬間、口内に広がるのがバランスの妙。卵黄のまろやかさ、ソースのほのかな酸味、ベーコンの塩味、パンの香ばしさが混然一体となり、ひと口ごとに朝が満ちてゆく。

朝の冷気がまだ残る時間帯、この皿を食べる幸福は、温泉の余韻と、きちんと作られた皿がもたらしてくれる清々しさに他なりません。

料理そのものの説明はすでに行ったので、工程や素材について細かくは触れませんが、一点だけ。

オランデーズソースの温度と乳化具合、ポーチドエッグの火入れ、マフィンの焼き加減が揃って初めて「完璧な一皿」へと。この「微妙な同調」が揃っていたことが、私の満足感を左右したことだけは強調しておきたいと思います。

朝にふさわしい、静かな“幸福感”がじんわりと身体に染み渡りました。

最後のベランダ露天 — 余韻を浸す時間

朝食後、もう一度ベランダに設えられた露天風呂に。

外気はまだ冷たく、湯の熱が肌を包むと、目の前の水平線がゆっくりと光を増していく。

ほんの数分の時間だが、旅の締めくくりには不可欠な「湯の儀式」。湯上がりに軽くタオルで流した後、部屋で荷物をまとめ、チェックアウトの準備をしました。

チェックアウト後の小さな旅 — 下田へ、少しだけ散策

チェックアウトを済ませ、土肥から海沿いの道をゆっくり走る。

目指した場所は下田。ここで少しだけ観光を。

黒船来航の史跡やペリーロードの石畳。

港の風景を短時間歩く。

街の空気を胸に。

観光は軽めに、町を少しだけ感じる行程。

ゆっくりお茶菓子をいただき。

地元の小さな店先を覗いたりして。

旅の終盤に柔らかな余韻を付け足した。

途中の寄り道 — 伊東のアピタ、そしてスーパーあおきへ

帰り道に伊東のアピタへ寄り、また地魚を買って帰ろうと思っていたのですが。

残念ながら目当ての魚屋さんが休みでした。

代わりに近くの「スーパーあおき」に立ち寄り、魚の売り場を物色。そこで買ったのが以下のものです。

カワハギ(肝つきの刺身用一尾)

アジ(鮮度の良い丸物)

マンボウの刺身と肝(既に捌いてパックされているもの)

夕方に帰宅してから、これらの魚を自分でさばき、夜の食卓に出すことに。

釣りや魚捌きの愛好家なら日常の所作だが、私にとっては少し久しぶりの手仕事。ここから先は、その「素人仕事」のリアルを、手順とともに丁寧に書き留めます。

自宅での捌き仕事—カワハギとアジを捌く(経験と調べたことを織り交ぜて)

今回のテーマは、この「捌きという行為」そのもの。スーパーで買った魚を持ち帰り、まな板に向かうことで、旅で少し緩んだ気がまた引き締まります。

包丁とまな板、キッチンペーパー、氷水、ボウル、そしてペーパータオル。用意する道具はシンプルだが、下処理の工程は丁寧に行う必要がありました。

基本の心得(事前に調べたポイント)

私は作業に取りかかる前に、カワハギの肝の扱い方やアジの三枚おろしの基本を改めて検索。参考にした情報の要点は以下のとおりです(詳しい手順は後述):

  • カワハギは肝(肝臓)が旨味の要で、頭を外してから内臓を引き抜くと大きくて食べ応えのある肝が出てくることがある。肝を傷つけないように注意し、肝は刺身のつけダレ(肝醤油)や蒸し物で使える。捌き方の流れとしては、ウロコ取り→包丁で頭側に切り込み→頭を外して内臓と肝を取り出す→身を薄く切る(五枚おろしなど)という手順が一般的。
  • アジは三枚おろしが基本。うろこと内臓を取り、尾から頭方向に包丁を寝かせて切り、腹を開いて内臓を抜く。次に背側から中骨に沿って刃を滑らせて片身ずつ剥がし取り、血合いや小骨を骨抜きで除去する工程が必要。丁寧にやると刺身も呈できる。
  • マンボウの内臓(腸や肝)は地域によって珍味として扱われ、肝や腸を「肝和え」や「味噌炊き」にする文化があるため、加工済みのパックは調理のハードルを下げてくれた。いくつかの情報源では、マンボウの内臓はコラーゲンや特有の栄養素を含む点が注目されている。

注)上のポイントは必ずしも全ての魚に同じ工程が必要という意味ではありません。実際に捌くときは、魚種ごとの骨格と内臓の位置を確認し、慎重に行うことが肝要です。

カワハギの捌き(私の実践と注意点)

実際にカワハギをさばいてみると、想像以上に慎重さが必要でした。次に私が実際に行った手順と、途中で感じたポイントを記します。

  1. まずは流水で洗う。 鱗と表面の汚れを軽く落とす。手早く、体温で身が温まらないよう注意する。
  2. ウロコを落とす。 小さなウロコが細かく付着していることがあるので、尾から頭に向かってこそげ落とす。
  3. 頭と腹を切る場所の確認。 カワハギは体が薄く、カマ骨のラインがわかりやすい。ここに沿って包丁を軽く入れておくと、頭を外す際に身を傷めずに済むとの情報があり、私もその通りに軽く切り込みを入れてから頭を外す。
  4. 頭を外す。 頭を引きちぎるように、または包丁で切り離すようにして外すと、頭側に肝が付いてくることがある(良型だと、肝が立派で思わず歓声をあげたくなる)。肝を傷つけないよう、指先で丁寧に取り出した。ここは慎重に。肝は壊れやすいので、ボウルに取って氷で冷やした。
  5. 内臓を除去し、腹側を洗う。 臓物を取り出した後、腹腔の中を流水で流し、血合いや残りの内臓をきれいにする。
  6. 身をおろす。 カワハギは身離れがよく、五枚おろしや薄造りに向く。私は薄目に切って刺身にすることにした。刃を寝かせ、皮付きで引き切るようにして身を切り出していくが、薄造りにすると身の繊細さが際立つ。

振り返りと注意点:カワハギの肝は極めてデリケートで、肝をつぶすと風味が損なわれる。肝醤油にする場合は、軽く湯通ししてから刻んで醤油と和えるなど下処理をすると生臭さが抑えられる(プロも薦める手順とのこと)。また、カワハギは小骨が多くないが、包丁の当て方が悪いと身が崩れてしまうので、刃の角度を意識することが肝要である。

アジの三枚おろし(私の実践と学び)

続いてアジ。アジは比較的捌きやすい魚だが、丁寧にやると刺身にしても美味しい。

  1. ウロコ取りと腹の開き。 アジは小さなウロコが多いので、尾から頭に向かってこそげ落とす。腹を開いて内臓をきれいに取り出す。
  2. 頭を落として三枚におろす。 包丁を寝かせて背や腹に沿わせ、中骨に当てるようにして片身ずつ剥がす。切り残しがあると身がちぎれるので、刃先を中骨に当てながら滑らせるのがプロのコツとのこと。
  3. 血合いや小骨の処理。 血合い骨は骨抜きで抜き、皮は料理に合わせて引く(刺身なら皮を剥ぐことが多い)。キッチンばさみや骨抜きがあると作業がはかどる。

実践の感想:三枚おろしは集中力がいる作業。最初は身に力が入り過ぎてしまい、端がちぎれることがあったが、回数を重ねるうちに手が馴染んでいった。新鮮なアジは刺身にしても甘く、捌いた自分で食べる喜びは格別であった。

まんぼう(マンボウ)の内臓パック — 珍味の扱い

スーパーで見つけたマンボウの内臓らしきパックは、既に処理済みのもの。

マンボウ(学術的には「マンボウ科」)の内臓は一部地域で珍味とされ、肝や腸は和え物・味噌炊き・肝醤油などに使われる。栄養価やコラーゲンの多さが話題になることもあるため、珍味として市場に出回ることがあるとのことだ。

取り扱いはメーカーや調理法に依存するため、パックのラベルや店員に調理法を聞くのが安全。今回購入したものは既に火を通しても良いように処理されており、酒肴にした。

捌き終えて — 食卓に戻るまでの道のり

作業を終え、切り身を皿に盛り付けると、見た目にも達成感が漂う。

カワハギは薄造りにして肝醤油でいただいた。

肝醤油は、肝を軽く湯引きしてすり潰し、醤油と合わせると丁度良いコクが出る(この方法は釣りや料理の実践指南でもよく推奨されているとのこと)。

今回は問題なかったが、カワハギの肝はやや生臭さが出ることがあるらしく、湯引きや酒での下処理が必要な場合があるとのこと。

アジの三枚おろしは、包丁の角度を探る時間が必要で、最初の数枚は身がぎこちなかったが、ただの食事では得られない「自分で仕上げた」満足感はそれらをすぐに凌駕する。

包丁を洗い、まな板を拭き、片付け終わると、家の中が旅の余韻と海の匂いで満たされていた。

旅の終わりに思うこと

旅はしばしば「持ち帰る体験」を与えてくれる。

今回の旅で持ち帰ったものは、夕陽の光、それから自分で捌いた魚の刺身の皿の2つ。どちらも手間と時間をかける価値がある。

朝のエッグベネディクトが私の胃袋を満たし、夜の手仕事が心を満たした。帰宅してから包丁を握る時間が、旅の物語を家の日常に繋ぎ止めるように作用してくれました。

参考・参照(捌き方・禅寺そば・マンボウの内臓情報等)

  • カワハギの捌き方・肝の取り扱い(図解と手順)。
  • アジ(三枚おろし)の基本手順(解説・動画)。
  • マンボウの内臓(腸・肝)の食用・珍味としての扱いに関する紹介

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