【箱根路開雲】まだ、すべてが静かだった頃の箱根

【箱根路開雲】まだ、すべてが静かだった頃の箱根

はじめに

2021年5月26日。まだ娘が生まれる前のこと。

今振り返ると、この一文だけで、その頃の空気が一気に戻ってくる。

時間の流れが、いまよりもずっと緩やかで、予定も、気持ちも、余白だらけだった時期。

この日は、箱根へ向かいました。

宿は「箱根路 開雲」。素泊まり、一泊二日。

食事をあえて付けず、宿と温泉と時間そのものを楽しむ、そんな旅でした。

箱根路開雲という宿の第一印象

宿に到着して、まず感じたのは「空間の完成度」。

入り口。

ロビー。

ラウンジ。

どこを切り取っても、過剰ではないが、しっかりと“おしゃれ”。

いかにも箱根らしい和の雰囲気をベースにしながら、どこか現代的で、洗練されている。

派手さはない。けれど、センスは確実にある。

こういう宿は、落ち着く。

「静かに過ごしていい場所ですよ」と、空間そのものが語りかけてくる感じがします。

チェックインを済ませて、部屋へ向かうまでの短い時間。

その移動すら、少し楽しいものでした。

部屋で過ごす、何もしない時間

部屋に入って、まず思ったのは、「ここから動かなくていいな」ということ。

広縁があり、外の景色を眺めながら座る。

荷物をほどき、特に急ぐこともなく、ただ腰を落ち着ける。

そして、日本酒。

広縁に並んで座り、日本酒で乾杯。

この瞬間だけで、この旅はもう十分に元が取れている。

テレビをつけるでもなく、スマホを見るでもなく、ただ酒を飲み、少し話して、景色を眺める。

最高のひととき、という言葉が、これほどしっくりくる場面はありません。

温泉と部屋、日本酒の無限ループ

この旅でやっていたことは、極めてシンプル。

部屋。温泉。日本酒。

そして、また部屋。また温泉。また日本酒。

これを、ひたすら繰り返す。

観光地らしい観光は、ほぼしていない。

どこかへ出かける予定も立てていない。

ただ、体が温まったら部屋へ戻り、喉が渇いたら酒を飲み、少し酔ったら、また温泉へ行く。

この循環が、とにかく心地よかったのです。

「素泊まり」という選択の正解

このとき、あらためて思いました。

素泊まりは、自由

食事の時間に縛られない。

「次は何時から夕食です」という予定もない。

空腹になったら軽くつまむ。飲みたくなったら飲む。眠くなったら横になる。

宿の“サービス”を最大限に受けるというより、宿の“空間”を借りて、自分たちのペースで過ごす。

箱根路開雲は、そういう使い方に、とても向いている宿だと思いました。

まだ、父になる前の自分

この旅を思い出すとき、必ず頭に浮かぶのは「まだ娘が生まれる前だった」という事実。

時間は、今よりも確実にゆっくり流れていました。

予定も、責任も、今ほど重くありませんでした。

もちろん悪い意味ではなく、むしろ、懐かしさに近い感覚。

あの頃の自分たちは、こうして何も決めず、何も急がず、ただ温泉と酒に身を任せることができたのです。

今では、もう少し違う旅の形になっていますが、それはそれで、悪くない。

けれど、こういう旅も、確かに自分たちの一部だったことを思い出します。

記憶として残る、静かな一泊二日

派手な出来事は、何もなし。

特別なイベントも、何もなし。

それでも、この箱根路 開雲で過ごした一泊二日は、不思議なくらい、はっきりと記憶に残っています。

おしゃれなロビー。広縁で飲んだ日本酒。何度も往復した温泉への道。

そして、「この時間が、ずっと続けばいいのに」と、心のどこかで思っていた自分。

そんなことを考えながら、また次の旅を計画しています。

旅は、人生の区切りを、静かに教えてくれる。

この箱根の一泊二日は、確かに、ひとつの区切りだったのです。

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