【湯河原・上野屋】第一部・チェックインから夕食前まで

【湯河原・上野屋】第一部・チェックインから夕食前まで

はじめに

娘が生まれる前、まだ会社員だった頃の小さな旅

2020年11月8日、日曜日。

湯河原温泉・上野屋へ。

この日は、残念ながら出発を早い時間に会社へ向かう形で迎えました。

当時の私はまだ会社員。休みの日でも仕事の都合が優先されることが多く、今回もその形。

出社して一仕事終えてから、そのまま湯河原へ向かうという、少し忙しいスタートとなりました。

仕事終わり、小田原駅での儀式

仕事を終え、小田原駅に着いた私は、ふとひと息つきたくなりました。

そこでビールを一本購入し、電車の中で飲むことにしたのです。

もちろん、他に人のいない席を選びました。

静かな車内で、缶を開ける「プシュッ」という音。

冷たい液体が喉に落ちていく感覚は、やはり特別なもの。

この日を象徴する、ささやかな“旅の始まりの儀式”でした。

湯河原駅からバスで

湯河原駅に到着。

駅前からバスに乗り、目的地最寄りのバス停へ向かいます。

車窓には、静かに暮れる町並みと、季節を感じさせる景色が流れていきました。

バスを下車し、歩いていくその途中、“お気に入りの温泉”であるままねの湯の近くを通りすぎる。

「次はここに入ろうかな」と、早くも次の計画が頭をよぎりました。

しかし、この日は、上野屋という宿に全ての時間を捧げるつもりで来ています。

上野屋の佇まいに、心が動く

道を歩いて進むと、ふと視界の中に見えてくる上野屋の建物。

そこに立った瞬間、思わず息をのみました。

上野屋は、300年を超える歴史を誇る老舗旅館であり、江戸時代から続く湯河原温泉の代表的な宿のひとつ。

かの水戸光圀公が立ち寄ったという伝承も残るほどの長い歴史を持ち、国の登録有形文化財にも指定されています。

その佇まいは、決して派手ではありません。

しかし、歴史と時間がしっかりと刻まれた佇まいは、見る者の心を圧倒します。

私の中に、自然と気分の高揚が芽生えました。

「この場所に泊まれるのか」

その思いだけで、ここまで来た甲斐があるとすら思えました。

旅館内部の空気

玄関をくぐれば、そこにはまるで別世界が広がっています。

フロント、待合室の雰囲気は、重厚でありながらもどこか柔らかい空気に包まれていました。

階段を上がるたび、窓から見える風景が目に入る。

そのすべてが私の心に静かに突き刺さります。

古き良き日本旅館ならではの佇まいと、そこに流れる時間。

これはただの宿泊ではありません。

旅そのものを濃厚に感じられる空間だと、歩くだけで理解できました。

部屋の印象

部屋に通されると、まずはその静かな雰囲気に心が落ち着きました。

昔ながらの建物を残しながらも、清掃が行き届いており、快適さが保たれています。

古い建物であるにも関わらず、不便さはなく、過去と今がうまく調和している印象でした。

窓から見える景色は、どこか穏やかで、ここにいるだけで時間がゆったりと流れていくように感じられました。

コロナ禍ならではの贅沢 ― 温泉が貸切へ

この時はまさに コロナ禍の真っ只中

多くの宿が新しい生活様式を模索している中、上野屋では温泉が貸切制になっていました。

結果として、贅沢とも言える入浴体験が可能になったのです。

この日の湯めぐりは以下の四つ:

  • 貸切露天風呂「洗心の湯」
  • 貸切露天風呂「藤木」
  • 貸切露天風呂「千歳」
  • 入れ替え制内風呂「むびょうの湯」

この四つには、それぞれ異なる趣と情緒がありました。

貸切露天風呂では、外気を感じながら湯に浸かる贅沢を独り占めできます。

湯河原温泉名物とも言えるやわらかな湯質は、肌の奥まで温め、心までほぐしてくれるようでした。

二度目の湯で迎えた静けさ

夕食前に二度お湯に浸かり、体と気持ちの準備を整えました。

貸切の空間だからこそ味わえる、誰にも気を使わず、自分自身と向き合う時間。

これは、日常ではなかなか得られない感覚です。

湯上がりの火照った体を涼ませながら、一歩廊下に出ると、宿全体の静けさが余計に際立って感じられました。

湯上り処での余韻

温泉を出たあとは、湯上り処へ向かいます。

ここはただ座っているだけで気持ちが整うような、絶妙な空間でした。

柔らかな光と落ち着いた色合い、静かな時間。

湯上がりの余韻をじっくりと感じることができます。

さらにこの湯上り処には、外の景色を眺めながら楽しむことのできる足湯「そくさいの湯」 があります。

足だけを湯に浸し、空を見ながら呼吸を整える。

このわずかな時間が、思っていた以上に心地よく、夕食への準備が、自然と出来上がっていきました。

第一部・まとめ

今回は、チェックインから夕食前までを中心にレポートしました。

会社員としての立場と、湯河原温泉という非日常の空間―そのギャップを味わいながら進んだ旅の序盤。

歴史ある宿に身を置き、静かな時間とお湯に心を預け、体と心を緩めていく。

この “ゆったりとした時間の積み重ね” が、何よりの贅沢であり、この日の旅の本質だったように思います。

この後の夕食と夜の時間については、第二部でじっくりとお届けします。

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