【箱根・一の湯仙石原品の木】宿泊記(第1部)

【箱根・一の湯仙石原品の木】宿泊記(第1部)

はじめに

─チェックインから就寝まで。湯と食の夜を丁寧に辿る─

2020年6月7日。コロナ禍の最中、箱根・仙石原「一の湯 仙石原 本館 品の木」に妻と二人で向かいました。まだ娘は生まれる前、だからこそ味わえる二人だけの静かな時間がそこにはありました。

現地へは昼に到着。チェックイン前に立ち寄ったのは、強羅から箱根湯本へ続く道沿いの人気店、腸詰屋箱根店。宿に車を置いて、徒歩で行きました。

観光客も少なく、店内はゆったりと静かで落ち着いていました。テイクアウトの予定でしたが、イートインで食べていくことに。

注文したのは、ソーセージとハムの盛り合わせ、ポテトサラダ、フレッシュサラダ、そしてパンが載るセット。

もちろん、ここではよく冷えた ビールで乾杯。ジューシーなソーセージの旨味とビールの苦みが美しく絡み合い、箱根の旅の始まりを軽やかに祝ってくれる昼食となりました。

宿で食べるアテを購入して、退店しました。

その後、歩いて宿へ戻るとチェックインの時間。ロビーには開放感ある空気が漂い、スタッフの柔らかな笑顔に迎えられます。

館内は落ち着いた和の佇まいで、まるで私たちを歓迎してくれているかのよう。コロナ禍での静かな宿泊客への接客というのは、大きな安心感を与えてくれました。

湯へ、酒へ、そして再び湯へ──三部湯体制

宿泊客にとって「温泉付き客室」は最大の味方。大浴場はコロナ禍で閉鎖されていたが、私はそれを問題だとはまったく感じなかったのです。「泉質」が良いことはもちろん、客室に温泉が付いているという事実が、宿全体の満足度を最初から押し上げていたから。部屋へ入るや否や浴衣に袖を通し、客室内の湯をそっと開きました。

湯船に浸かると、箱根の湯の柔らかさが身体の隅々へと染み渡っていきます。渋滞の疲れ、緊張の残り香、日常の重みが、湯気とともに溶けていく。20分ほど浸かると、もうそれだけで「ここに泊まって良かった」と心から思えます。

湯上がりには冷蔵庫からビールを取り出し、コロナ前に箱根で買い求めていたものを思い出しながら喉に流し込む。そして、再び湯へ─この三部湯体制(湯→酒→湯→…)を3回ほど繰り返し、夕食前の体と心を十分に整えました。

「品の木」での夕食(一言コメント)

夕食は宿内のレストラン「品の木」。グループごとに仕切られたスペースで、安心して食事ができる配慮が嬉しかったです。

席に着くと、目の前にはお品書きが用意されていました。

ここからは、 一品につき一言コメントで、料理の印象をお伝えします。

●酒肴3種盛り

つぶ貝と三陸若芽(こんぶ醤油)
→ 海の旨味と磯の香りを感じる、ビールにも日本酒にも合う定番。

蟹新丈・明太ソースがけ
→ ふんわりした蒸し物×辛みのアクセント。食欲が自然に進む。

鰻と牛蒡の山椒風味煮
→ こっくりとした味に山椒の清涼感。ご飯にも合う一筆。

●摘み上げ湯葉の冷し小鉢

→ 滑らかな湯葉が主役。生クリームのやさしいコクと一体に。

●銀鱈の自家製西京漬け焼き

→ 味噌の甘みが銀鱈の脂と溶け合い、しみじみ美味い。

●茄子のはさみ揚げ・おろしポン酢

→ サクッと軽やか、ポン酢の酸味で後味がスッと整う。

●名物 特選豚の美味出汁しゃぶしゃぶ

→ 豚肉の甘みと出汁の旨味が雑味なく昇華。飽きない主役。

●香の物・御飯

→ 白飯の相棒として完璧。干物や小鉢と合わせる楽しさ。

●氷菓子:洋梨のシャーベット

→ 最後に清涼感。余韻をすっきりと切ってくれる。

満足感の高い夕食でした。

特集・日本酒「塔ノ沢」(IchinoYuオリジナル)

一の湯オリジナルの日本酒「塔ノ沢」 

今回の宿泊で特筆したい日本酒です。

「塔ノ沢」ってどんな酒?

調べてみると、「塔ノ沢」という名前は箱根の湯坂路沿いに位置する地名であり、古くから温泉湧出地として知られている場所であり、一の湯の本店があるところです。

そこから名付けられたこの日本酒は、箱根・一の湯のブランド酒として限定流通している銘柄で、地域の湯と風土を表現する一杯として提供されています。

透明感のある香りと穏やかな旨味が特徴で、料理との相性がとても良いと評価されています。フルーティな香りと柔らかな口当たりは、品の木の会席やしゃぶしゃぶの出汁にも寄り添い、湯上がりの余韻を損なわない優しい後味を残します。

箱根湯本周辺の酒販店や宿の売店で扱うこともあり、土産酒としても人気があるようです。地元の「温泉」と同じように、旅の記念に一本買い求める客も多いという情報がありました。

食後─湯→ビール→温泉→日本酒

夕食後でも習慣は変わりません。

温泉に戻る。上がってから一息。部屋で待つビールへ。

箱根七湯ビールのピルスナー。コクのあるビールが胃と喉を満たしてくれます。

再び湯へ。夜の静けさの中、身体は柔らかく解けていく。次は日本酒。

「望」を湯上がりに傾け、腸詰屋で買ってきたアテと合わせる。

これが旅館での静かな夜の過ごし方であり、コロナ禍で人との接触を避けながらも豊かな時間を紡ぐコツであると感じました。

就寝前の余韻

夜の最後にもう一度湯に浸かり、体内のリズムを整えます。客室の温泉は「最後の仕上げ」に最適で、熱すぎずぬるすぎず、締めにふさわしい一浴を提供してくれるのです。

深い眠りにつく前、ふと窓の外を見ると、塔ノ沢の夜景が静かに揺れていました。湯と食と酒に満ちた一夜は、こうして静かに暮れていくのです。

実用メモ(読者向け)

  • 塔ノ沢(日本酒):宿泊者限定流通の地酒。箱根周辺の酒販店で入手できる場合あり。
  • 腸詰屋:箱根の人気ソーセージ専門店。昼食に立ち寄ると旅が軽やかになる。
  • 客室温泉:大浴場閉鎖時でも満足度が落ちない設え。客室に湯がある強みは大きい。

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