【新宿エール】ライブ前の静かな儀式

【新宿エール】ライブ前の静かな儀式

はじめに

10月25日、土曜日。

人は大切な夜の前、わずかな「儀式」を欲する。

それがコーヒーであったり、短い散歩であったり、あるいは一杯の酒であることも。

私にとってはビールでした。

今回の儀式は新宿歌舞伎町の片隅にあるクラフトビール工房、新宿エールでの一杯。

この店は、歌舞伎町セントラル通りに2021年に開業したクラフトビールの醸造所兼ビアバーで、街の喧噪の中にふと落ち着きを与えてくれる存在感があります。

建物はビール工房としての顔を前面に出しつつ、屋上テラスや貸切BBQのプランなど、多彩な楽しみ方を用意。歌舞伎町という場所柄、夜遅くまで営業しており、夜更けの一杯を求める客にとってはありがたいスポットだと感じました。

入店の理由 — 小さな偶然が作る心の高揚

その日はOasisの来日公演。東京ドームへ向かう前、私の心は浮き足立っていました。

新宿エールに足を踏み入れたのは単純で、店内でOasisの映像が流れていたから。音楽と同じ時間軸に身を置くことは、これから向かう夜を「現実」に変えるちいさなスイッチに。

普段と同じ通りが、いつもより少しだけ意味を帯びて見えました。

店内にはビールの発酵タンクやパイプがあるとのこと。この事実が「工房で飲んでいる」という感覚を強めてくれる。

カウンターに立ち目の前にあるタップを眺めると、どれを選ぶかでその夜の色合いが決まるような気もしました。

注文 — IPA、一口目の深い香り

メニューを見て注文を決める。

この日は迷わずIPAを。

ホップの香り、柑橘を思わせる香味、そしてしっかりした苦味。最初の一口はやはり「思っていた通り」の安心感。苦味が舌の奥で落ち着くと、逆に後味に残る麦の旨味がふっと顔を出し、ビールの厚みを感じさせてくれました。

店の醸造所で作られたクラフトだからこそ、温度管理やガス圧の微妙な違いがそのままグラスの中に反映されているかのよう。

IPAのグラスを傾けつつ、私はその日の予定をぼんやりと反芻。

ライブという非日常に向かう前の、この短い時間が私は好きです。ビールの泡がゆっくり消えていくのを見つめながら、気持ちを整える。それは準備運動のようであり、服を着替えるような感覚でもあります。

店の佇まいと客層

新宿エールは歌舞伎町の喧噪に面しつつも、内部はどこか落ち着いています。

カジュアルな客も、少し贅沢に楽しむ客も混ざり合い、年齢層は幅広い。

観光案内所(NaviSpot)を併設しているという店舗情報もあり、観光客がふらりと立ち寄ることも想定された設計のよう。屋上テラスやBBQ貸切など、グループでわいわい楽しむための導線も整っているため、友人同士での利用から一人飲みまで、様々な使い方ができそうです。

味の記録 — IPAの詳細を言葉にする

  • 香り:柑橘と松のようなホップの鮮烈な香り。グラスを鼻に近づけるとまずその芳香が広がる。
  • 口当たり:最初はしっかりとしたボディ感があり、中盤で苦味が存在感を示す。
  • 後味:苦味が引いた後に残る麦芽の旨味と、わずかな甘み。炭酸は穏やかで、飲みやすさを損なわない。
  • 総評:ライブ前の高揚を邪魔しない、しかししっかり味わえる一杯。個人的には、このIPAが「夜の幕開け」を告げるのにふさわしいと感じた。

こうした記録は、記憶の引き出しを開けるためのラベルのようなもの。数年後に読み返したとき、私はきっとこの文章を手掛かりにその夜の空気を反芻することになるでしょう。

ちいさな余談 — 歌と酒の相互作用

Oasisの曲が店内に流れる。少し荒削りでありながらもメロディが胸に残るその音は、ビールの苦味と不思議な親和性を見せてくれます。

音楽とアルコールが交わるとき、感情の輪郭は鋭くなる。期待が高まり、身体は次第に「夜仕様」へと変革を遂げる。

その後、グラスを空け、店を後に。外に出ると、街の光がより鮮やかにーライブ前の非常に良い兆候です。

店舗データ(参考情報)

  • 住所:東京都新宿区歌舞伎町1-14-5(マルイビル内)など、店舗情報を公式に確認。
  • 営業時間:深夜まで営業(サイトや掲載情報で「11:00〜28:00(=翌4:00)」などの表記あり)。夜遅くまで開いているためライブ帰りにも立ち寄りやすい。
  • 備考:屋上テラス貸切やBBQプランなど、グループ向けの利用も可能とのこと。

(※営業時間やプラン等は変わる場合があります。訪問前に公式サイトや各掲載ページで最新情報をご確認ください。)

最後に — 小さな一杯が持つ力

ライブは、音楽そのものだけでなく、その前後にある小さな出来事や習慣によって色づけられる。新宿エールでのIPAは、私にとってその夜を「始める合図」となりました。

店の空気、ホップの香り、滲むような光—そうした要素が組み合わさることで、ただの外出が記憶に残る体験へと変わっていく。

もし次回またOasisのような夜があるなら、きっと同じ道を歩き、同じグラスを探すことでしょう。

新宿という大都市の真ん中で、こうして一杯に寄り添える場所があるということを、私は密かに嬉しく思いました。

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