はじめに
飲み歩きの帰り道、ふと「締めの一杯が欲しい」と思ったら自然に足が向く店がいくつかあるのですが、私にとって小田原の「ガンテツ」はまさにそんな店の一つ。

駅前という利便性、深夜まで開いている安心感、そしてどこか親しみやすい器と丼の存在感─そうした要素が重なって、酔いの抜けかけた頭にもすっと入ってくる、ありがたい一杯を出してくれます。

この日は夏の夜、外席で風に当たりながらの実食。
妻は塩を、私は醤油を選び、二人で少しずつスープを交換し合いながら食べました。
今回は醤油らーめん中心に、その構成と味わい、食べ方のおすすめまで丁寧にまとめます。
店の佇まいと使い勝手
ガンテツは小田原駅前に位置し、終電後でも開いていることが多く、夜遅くの「ちょっと一杯、締めの一杯」に重宝する店。

カウンター席のほか外席が用意されていることがあり、特に暑い季節は外で風を受けながらラーメンをすする独特の心地良さがあります。

店内はラフで気取らず。地元客や仕事帰りのサラリーマン、飲み帰りの若者などで程よく賑わっていました。
ビジュアル:丼の第一印象
醤油らーめんは黒褐色のスープが印象的で、表面に薄く油の翳(かげ)がかかり、香りを閉じ込めています。

トッピングはチャーシュー、もやし、カイワレ、メンマ、海苔といったシンプルな構成。見た目に派手さはないものの、端正で整った佇まいが「丁寧に作られている感」を伝えます。
写真でも分かるように、醤油の色がスープ全体に深く染み渡っており、香りから既に期待をそそられます。
スープの味わい(醤油) — 濃さと奥行き、飲み干したくなる余韻
一口含むと、まず感じるのは醤油ダレの香ばしさとコク。
濃口醤油のシャープな旨味が前面に出ているのですが、同時に動物系のまろやかな出汁がしっかりと下支えしており、塩気だけが目立つ「きつい醤油」ではありません。
むしろ醤油の輪郭は明確でありながら、出汁の甘味やうま味がバランスを取っているため、飲み進めてもくどさを感じにくいのが特長です。
表面の脂は多すぎず少なすぎず、舌にのせるとスープの旨味をしっかりと広げてくれます。醤油の香りには軽いロースト感があり、焦がしネギや煮詰めた醤油の微かなニュアンスも感じられました。
全体として「満足感の高い醤油ラーメン」という印象で、シメとしてもしっかりと満足させてくれます。
麺と食感 — 中細の縮れが醤油を抱き上げる
麺は中細の縮れ麺。
コシはほどよく、啜ると醤油スープを程よく絡め取ります。縮れがあるぶん、スープとの親和性が良く、麺を口に運ぶたびに醤油の風味がしっかりと届けられる作りです。
茹で加減は比較的「やや柔らかめ〜普通」の範囲で、深夜に食べるシメの一杯として胃に優しい仕上がりでもあります。
トッピング — シンプルだが役割は明確
- チャーシュー:厚みがあり、噛むとほろりと崩れるタイプ。脂身と赤身のバランスが良く、スープの醤油感とよく合います。
- もやし:しゃきしゃき感を残し、醤油スープに清涼感をもたらします。飲み歩きで疲れた胃にちょうど良い軽さ。
- カイワレ:後味に少しピリッとした清涼感を加え、スッキリとした後口に貢献。
- メンマ・海苔:風味のアクセントになり、食べ飽きないように変化を与えます。
全体としてトッピングは多くありませんが、どれもスープと麺の良さを殺さない程度に機能しており、余計な演出のない誠実な構成です。
塩らーめん(妻の一口メモ)
妻が頼んだ塩らーめんは、確かに「優しい」味わいで、塩ダレの尖りがなく、出汁の旨味が前に出てくるタイプ。

醤油に比べて軽やかで、飲んだ後に胃を穏やかにしてくれる印象。
夏の飲み終わり、外席で風に当たりながら食べるには、塩も非常に良い選択だと感じました。
総評 — 深夜に頼れる一杯、外席の風と相性が良い醤油
ガンテツの醤油らーめんは、「きちんと作られた町の中華そば」とでも言うべき安定感があります。

派手さでは勝負しないものの、醤油の輪郭と動物系出汁のバランス、程よい油感のコンビネーションで最後まで飽きずに食べられる一杯です。
終電前の「もう一杯」にふさわしい満足感と、外席で風に当たりながら食べる情景がよく似合う―そんなラーメンだと感じました。
飲み歩きで酔いが残る夜、電車で帰る前に「ちょっとだけ落ち着きたい」と思ったら、ここで一杯。深夜の小田原で、静かに余韻を締めくくれる良店です。