【伊東・大東館】離れ洋室の宿泊記

【伊東・大東館】離れ洋室の宿泊記

はじめに

─ 湯に浸かり、干物を焼き、酒を傾ける「五つの湯」詳細レポート ─

2020年12月31日(大晦日)コロナ禍の大晦日。世間は静まり返る一方、私たちには小さな祝祭がありました。

この日の宿は伊東温泉大東館。

部屋は本館ではなく、離れにある洋室部屋。

この扉から外へ出ると離れ部屋があります。

ここの備えられたキッチンを頼りに、地元の干物を買い込み、部屋で酒を冷やしておく─そんな「自炊できる温泉宿」ならではの楽しみ方が大東館・離れ洋室の魅力の一つです。

夕刻から夜にかけての動線は、単純でそれゆえに満たされるものでした。

入っては湯、出ては飲む。あるいは干物を焼いてはまた湯に潜る。温泉と食と酒が交互に並ぶ時間は、年越しの慌ただしさを忘れさせるに十分でした。

まずは、当宿の温泉の全体像を整理してから、個々の浴場へと丁寧に踏み込んでまいります。

重要な事実は2つ。ひとつは「全てのお風呂が源泉100%かけ流し」であること、もうひとつは「大浴場は入れ替え制で、貸切風呂が無料で利用できる点」です。

これらは公式情報にも明記されておりまして、湯好きには心強い仕様でありました。

全体のあらまし(源泉かけ流し、貸切は無料/予約不要)

宿の案内では、大東館のお風呂は「全て源泉100%・かけ流し」であり、館内に点在する浴槽は24時間利用可能とのこと。

貸切風呂は3か所あり、宿泊者は空いていれば予約不要で自由に使える(フロント前の表示板で使用状況を確認できる)仕組みになっています。

男女別の大浴場は時間帯で入れ替え制となっており、どちらの浴場もそれぞれの良さを持っています。こうした点は、湯巡りの自由度を高めてくれる重要な要素でした。

では、ここから五つの湯(宿の構成は「大浴場2箇所+貸切風呂3箇所=合計5種の浴槽群」)を一つずつ、私の体験とともに詳述します。

1)大浴場「京の湯」(内湯の落ち着き)—しっとりと身体を包む木の香(一巡目に)

大東館の大浴場の一つ「京の湯」は、屋内のしっとりした趣をしっかりと残すタイプの風呂。

湯はやわらかく、泉質は単純泉の穏やかさを感じさせます。

浴場の造作は決して新奇さを追うものではなく、どこか落ち着いた“旅館の大浴場”らしい佇まい。

湯に浸かると外気の冷たさがじわり引き抜かれていき、湯上がりに立ち上がると肌はしっとりと潤っておりました。

大晦日ということもあり客層は控えめでしたが、それが逆にゆったりとした独特の贅沢感を生んでいました。

入浴のコツ:湯温はある程度高めに感じますので、最初は短めに身体を慣らしてから長めに浸かるとよく温まります。

2)大浴場「流れ湯(または大露天)」—空と視界が開ける露天の時間(夕方の光が美しい)

もう一方の大浴場は露天風呂の趣が濃く、外気と湯の接点をしっかり味わえるつくり。

男女の浴場は入れ替え制のため、タイミングによってはこの露天側を独占できる時間があり、夕方の柔らかな光が湯面に反射すると、海風の香りが混じって肌に心地よく当たりました。

露天からの見晴らしが大きくない分、風の匂いや夜気の冷たさが温泉の熱と対照をなして、その時間を印象づけます。

入浴のコツ:露天は夜に赤々とした照明になる前の“マジックアワー”が特に心地よく、入浴しながら外気を受けると体がすっと整います。

3)貸切「露天風呂」—自由に入れる「私たちだけの露天」

大東館の貸切風呂のうち、まず露天タイプの貸切は、自然の趣をそのまま感じさせるしつらえ。

木立や石が配され、できるだけ手を加えずに「素のまま」の雰囲気を残しているとの説明に相違なく、湯に浸かっていると周囲の空気感がそのまま染み込むようでした。

貸切風呂全て無料で予約不要、表示ボードで空きを確認して利用する方式のため、小さな手続きで独占できるのがありがたかったです(特に年末で人出が絞られている今回は、空きが取りやすく、気兼ねなく何度も使えました)。

私たちは、干物を焼いた香りを嗅いだ後、ゆっくりと湯に浸かる、そしてビールや日本酒を飲むという、部屋→湯→食→湯のシンプルな反復を楽しみました。

貸切ならではのプライベート感が、年末のしみじみとした時間に合っていました。

4)貸切「五右衛門風呂」—こだわりの鉄釜と差し替え温度、遊び心のある一浴

大東館の貸切には五右衛門風呂という、昔ながらの“釜”をイメージした浴槽も。

案内によると、鉄の釜を用いることで浴槽の底から温まり方に趣が生まれ、二つの釜で温度が異なる設定があるとのこと(こうした趣向は大東館の案内に明記されております)。五右衛門風呂は、やや火の記憶を感じさせるような温度感があり、じっくりと腰を沈めて湯を楽しむのに向いています。

私たちはここで、わずかに熱めの湯に肩まで浸かり、身体の奥から温度が巡る感覚を楽しみました。五右衛門の土台が作り出す独特の温まり方は、他の浴槽とは違う「汗の出方」を与えてくれます。

5)貸切「寝風呂(檜の寝湯)」—体を預けるように横たわる、浮遊する快楽

三つ目の貸切は、寝風呂と呼ばれる檜(ヒノキ)浴槽。

浴槽の底に玉石を敷き、少し体を傾けて足を伸ばすと“寝そべる”ように入れるタイプの湯で、重力の力を抜いて身体を預ける感覚が強く得られます。

夜遅く、静けさだけが残った露天の脇で寝湯に身を横たえると、遠くの音も近くの呼吸も柔らかく包まれ、温泉の蒸気に含まれる微かな鉱物の匂いとともに、時がゆっくりと流れていくのを感じました。

寝湯の魅力は「力が抜ける」ことです。長湯が苦手な方でも、ここであお向けになって深呼吸をしているうちに、自然と全身の緊張がほどけるはずです。

それぞれの湯を巡る「私たちの流儀」—入浴と飲酒の正しい(?)反復

大東館滞在中の私たちの型は単純。

まずは大浴場で肩慣らし(京の湯)(流れ湯)、次に貸切で風の匂いを味わう(貸切露天)。

夕刻にもう一度大浴場へ─湯から上がれば部屋のキッチンで干物を焼き、静岡麦酒で乾杯。

夜は五右衛門風呂でじっくりと温まり、寝湯で締める。

部屋に戻っては日本酒。

鍋島や磯自慢の一升瓶をゆっくりと傾けながら

紅白歌合戦を大音量で聴きながら贅沢に年越しをする─そうしたリズムを何度も反復したのです。

湯→酒→湯→酒のリズムが、案外、心の整え方として正しいことを再確認しました。

公式表示にあるとおり、貸切風呂の利用は無料で予約も不要なため、気が向いた時間にふらりと専有できるのが実に気楽で、贅沢を気負わずに続けられる大きな理由でした。

部屋の利点:キッチン付き離れで「干物」を焼く愉楽

離れの洋室のキッチンは、この宿の大きな強み。

干物を焼いてすぐに湯上がりの肴にできること、そして日本酒やビールを冷やしてすぐに飲めること。

12月31日は魚屋さんが閉まっていることを見越して、あらかじめ干物屋で干物を買い込み、それを部屋で網焼きにしました。

脂の乗った干物を熱々で頬張り、合間に湯に浸かるという単純な反復が、時に豪勢な食事よりも強く心に残ることを改めて感じました。

焼けた干物の芳ばしさと温泉の湯気が混じり合う時間は、年末の特別な匂いとなって記憶に刻まれました。

年越しの夜:酒(鍋島・磯自慢)、音楽、温泉の三位一体

この夜のもう一つのハイライトは「音楽」と「酒」の調和。駅前の酒屋で仕入れた日本酒(鍋島の五百万石純米吟醸、磯自慢・山田錦吟醸の一升瓶)。

これを湯上がりに少しずつ口に含みながら年越しの紅白歌合戦を鑑賞。離れの部屋ゆえに遠慮無く音量を上げ、MISIAのステージに「ブラボー!」と声を出したのも良い思い出です。

音楽の高揚は、湯の余韻と酒の余韻がさらに深まるスパイスになり、年越しの瞬間に小さな拍手をしてから寝室で眠りにつきました。

実用メモ(読者向けの役立ち情報)

  • 貸切風呂の利用法:フロント前の表示板で使用状況を確認し、空いていれば直接入浴に向かえば良い(予約不要)。混雑時は譲り合いが礼儀。
  • タオル等のレンタル:タオルのレンタルは有料の場合がある(現地案内に基づく)。必要ならフロントで確認を。
  • 湯質・衛生:公式に「源泉100%かけ流し」と明記されているため、湯の鮮度や泉質を重視する方には相性が良い。敏感な方は湯の温度に注意して入浴を。

総括 — 湯と酒と干物が紡ぐ、年末の幸福

大東館での年越しは、シンプルで密な時間が積み重なった滞在でした。

「五つの湯」(大浴場2+貸切3)はそれぞれ個性があり、源泉かけ流しの湯が日常の疲れを抜いてくれる。

離れのキッチンでは干物を焼き、鍋島や磯自慢を傾け、MISIAに拍手を送りながら年越しをする—そんな過ごし方が、コロナ禍だからこそ贅沢に感じられた一夜でありました。

もし読者の方が「湯を中心に、かつ自室でゆっくりと食べたい」と考えているなら、大東館の離れ洋室は有力な選択肢です。

貸切風呂が無料で使えること、源泉かけ流しであること、そして部屋で自分たちのペースで飲み食いできること─これらは実際の滞在で大きな価値を示しました。

公式情報にもあるとおり、湯好きには本当におすすめできる宿です。

参考(本文で参照した公式・紹介ページ)

  • 大東館公式サイト(お風呂・貸切露天の案内)。
  • 大浴場案内(京の湯・流れ湯などの入れ替え制記載)。
  • 宿泊サイト・施設紹介(貸切風呂の具体的な名称や利用方法の解説)。

旅館・ホテルカテゴリの最新記事