【土肥・頬杖の刻】2泊3日の旅(第2部)

【土肥・頬杖の刻】2泊3日の旅(第2部)

はじめに

2024年4月17日(水)ー朝食(エッグベネディクト特集)〜修善寺散策〜戻って夕陽と夜ー

朝の光は思ったよりも柔らかく、カーテンを開けると桜の名残の緑が朝露をまとってきらきらしていました。

旅先の朝はどうしてこんなにも心地よいのでしょう。昨晩は湯と海と小さな肴で十分に満たされたのだが、朝食はまた別格の楽しみ。

今回は2日目の朝食を特集—特に私が選んだエッグベネディクトに焦点を当てて書きます。

妻はエッグフレンチトーストを愉しんでおり、やがて次の日の朝は二人ともエッグベネディクトに同調することになりました。

朝の盤(エッグベネディクトを丁寧に味わう)

エッグベネディクトとは、マフィンの上にハムやベーコン、ポーチドエッグ、そしてオランデーズソースを載せた、ブランチの代表的な一皿(起源はアメリカ、ニューヨークの説などが一般的と紹介されています)。

朝の一皿として油分と酸味と卵のやわらかさが同居するため、静かな海辺の朝に非常によく合う。

今回の頬杖の刻のエッグベネディクトは、見た目からして丁寧に作られており、まず断面の期待感が高まります。ナイフを入れると、ポーチドエッグがとろんと溶け出し、温かな卵黄がマフィンとソースをまとわせていきます。

オランデーズの酸味とバターのコクが控えめに効き、塩気はベーコンの旨味が受け止めている。パンの焼き加減はふっくらとしつつも表面に軽い香ばしさがあって、卵黄のとろみを吸わせる役回りをうまく果たしています

噛むたびに層が崩れ、舌の上に重なり合った味が伸びていくような感覚—まさに朝にふさわしい満足感がありました。

私はこの皿に白ワインの軽いグラスを一口合わせたり、あるいはコーヒーで締めたりしましたが、いちばん素直に合ったのはやはり静かな朝の空気そのものでした。温泉でほぐれた身体に、黄身の温かさがじんわり染み入り、朝の行程をするりと始めさせてくれます。

妻の朝食 — エッグフレンチトーストのやさしさ

妻が選んだエッグフレンチトーストは、甘さと香ばしさが穏やかに調和する一皿。

外側は軽く焼かれていて、中は卵液を吸ったふんわりした食感。メープルやフルーツの酸味がアクセントになり、朝の活力をそっと充填してくれる印象です。

夫婦で同じ時間を別の皿で過ごす—こうした朝の共有も旅行の贅沢だと思います。

翌朝、ふたりともエッグベネディクトにしようと自然に話がまとまったのは、私の皿の魅力が妻の好奇心を刺激したからかもしれません。

朝の余白 — 出発前の小さな儀式

朝食のあとは、部屋で少しのんびり。コーヒーをすすり、外の海を眺める。

娘がいないこの時期の二人旅は、時間の使い方がとても自由。出発は遅めに設定し、伊豆修善寺まで足を伸ばしてみることにしました。

車に乗る前に、土肥・旅人岬の潮風をもう一度胸に入れてから出発。

そうした行為が旅先の余韻を長くしてくれます。

修善寺へ — 修禅寺、そして「禅寺そば」

車で一時間ほど走り、修善寺の町に到着。

修善寺の名所、竹林の小径や修禅寺、独鈷の湯などは訪れるたびに何度も心を落ち着けてくれる場所。

修善寺観光の概要や見どころは観光ガイドにまとまっています。当日はぶらぶらと散歩へ。

修禅寺の静けさを感じ、昼食に「禅寺そば」を目指しました(修善寺の名物として長く親しまれている「禅寺そば」については後述)。

「禅寺そば」は、修善寺温泉街の名物の一つで、禅寺(修禅寺)の修行と結びついた歴史を背負う蕎麦料理として知られています。

代表的なお店『禅風亭なゝ番』で提供している禅寺そば。

盛りそばととろろそばの両方が楽しめる構成

生わさびが葉つきで丸ごと提供されるなど、食べる前の所作にも楽しみがあるのが特徴。

禅寺そばの由来は、修行僧が断食明けなどに山菜やとろろを用いたそばを食べたことに由来すると伝えられ、地元では昔から親しまれている文化と結びついた一品とのこと。

お店ではとろろの器がひょうたん型になっているなど、見た目の楽しさもあり、薬味の使い分けで多様な味わいを楽しめる点が評判になっているようです。

(注:禅寺そばの提供方法や盛り付けは店舗により異なる場合があります。代表店のスタイルとして、ひょうたん形のとろろ器や葉つき生わさびの提供、もり&とろろの二種類がひと皿で楽しめる形式が観光案内にも掲載されています。)

「禅寺そば」の一口メモ(食文化の背景と楽しみ方)

  • 由来と意味:修禅寺の修行文化と結びついた食習慣から転じたものとされる。修行後の滋養食がルーツという説明が地元ガイドや歴史紹介で見られます。
  • 食べ方の工夫:生山葵をすって香りを楽しむ、山菜や薬味で味を変えながら食べる、とろろを混ぜて食感を変えるなど、一皿で変化を楽しめるのが特徴。
  • 店の様相:老舗の一軒家風の蕎麦処が多く、民芸調の内装で行列ができることもある人気メニューです。

ここでは説明を短めに留めましたが、禅寺そばは文章で紹介するに十分な物語性を持つ料理であることを再確認したので、後日別記事で紹介をすることとします。

修善寺 — 食後、短い散策へ

修善寺での短い散策。

竹林の緑と川音。

心の帯を緩めてくれました。

湧水を見ながらの休憩。

歴史ある建物の数々。

これらの建物を見て心が優しくなります。

そして神社へ。

神秘的な一本杉。

神々しさを感じる景色に心奪われました。

夕方に戻る — 昨日以上の夕陽を待ち受ける

宿に戻ると、辺りは午後の柔らかな光で包まれておりました。

この日の目的は、もう一つの貸切風呂に入ることと、ベランダ露天からの夕陽を楽しむこと。予報でも晴天が続くとのことで、海が黄金に染まる瞬間に期待を膨らませます。

私はさっと、昨日とは違う貸切風呂へ。

昼間に歩いた疲れを湯で流し、その後は部屋で軽く休憩を取りました。

夕方、ベランダに出ると、昨日よりも空気が澄んでおり、海の彼方に落ちる太陽の輪郭がくっきりとしている。

これほど美しい夕焼けが見られるのは稀だ、と思わずつぶやいてしまうほどで、刻々と表情を変える光景にため息が漏れました。

たっぷり書きたい — 夕陽の記述

夕陽は、まず低い雲をオレンジで縁取り、次第に海面に直線の光の道を伸ばしました。

光の道は刻一刻と幅を変え、海面のさざ波に沿って断片的に揺らめく。

目の前の海はまるで大きな鏡のように見え、太陽の赤い輪郭が波に砕けながら細かな破片を散らしていく。

空はオレンジから茜色、深い藍へとグラデーションを作り、その移り変わりが時間の経過を身体で感じさせる。

私は露天に浸かりながら、ゆっくりとビールを飲み、時折ハイボールに切り替えて口の中を整える。

熱い湯と冷たい酒、露天風呂の蒸気と海の冷気、光と影の対比が五感を満たしていく。

夕陽が落ちる瞬間、水平線近くに細い雲があり、それが太陽の輪郭を一瞬だけ柔らかくし、まるで光に向かって深呼吸するかのような風景を。

日が落ちた後もしばらくは空が燃えるように明るく、その余韻を露天でじっくり味わい尽くしました。

夕食と夜の繰り返し — 写真中心で味わう時間

その後夕食会場へ。

この日の夕食は写真中心、前日のように細かい料理名が並ばなくとも、夕食の幸福を伝えられればと思います。

テーブルは静かで品のある設え。まず前菜。

次にスープ。

付け合わせのパン。

そして魚のメイン。

そして肉のメイン。

小腹を満たすパスタ。

最後はデザート。

以上、写真での紹介です。

一皿ひと皿ごとに丁寧な仕事が施されており、味付けは素材の持ち味を生かす方向で統一。

ワインは白を中心として、魚介の皿にはすっと寄り添わせる。肉の皿には少し重めの赤とすると自然な流れでした。

料理とワインのマリアージュを、昨夜と同様に夫婦で楽しみながら、会話は少なく、風景と味に没入していきました。

夜の終わり — ベランダ露天と湯と酒の簡潔な幸福

夕食後は一貫して、露天→ビール→露天→ビール→たまにハイボール、という幸福の繰り返し。

湯と酒と海と空、それだけで心は満たされる。

娘がいる日々の前のこの静かな時間は、やはり特別。

夜風に当たり、波音を聞き、時折流れ星を探す。こうして二日目は静かに幕を閉じていきました。

参考(禅寺そば・修善寺観光・エッグベネディクトの基本情報)

  • 禅寺そば(修善寺名物)について:『禅風亭なゝ番』をはじめ、修善寺の伝統的なそば文化と提供スタイル(もり+とろろ、葉つき生わさびなど)が観光案内・店舗案内で紹介。
  • 修善寺周辺の観光情報(竹林の小径、修禅寺、独鈷の湯など):自治体の観光サイトや総合観光ガイドにまとめられています。
  • エッグベネディクトの概説(構成と一般的な由来):エッグベネディクトはマフィン、ポーチドエッグ、オランデーズソースを基本とする料理で、世界的に朝食/ブランチでの定番(定義的説明)。

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