夕陽とラウンジと、日本海の音に包まれた素泊まりの夜。
4月6日、日曜日。
この日は朝からの長い移動でしたが、車を走らせていくうちに、不思議と体の重さが取れていくような、そんな感覚がありました。

新潟・瀬波温泉へと向かう道というのは、どうも心が広がっていく。田んぼの広がりと淡い春色の空のせいか。それとも、日本海が近づいてくる気配のせいか。
今回の宿は 大江戸温泉物語 premium 汐美荘。

素泊まりという、ある意味で気楽な過ごし方で一泊。

食事がない分、施設と景色をじっくり味わう旅にしたいと考えました。
海のほうが先に出迎えてくれる宿
瀬波温泉に近づくと、まず目に入るのは「海そのもの」。

宿に着く前に、道路わきから海が見え始め、潮の匂いがふっと入ってきました。

汐美荘は海のすぐそばに建っています。

チェックイン前に少しだけ外に出ると、ゆるく波が寄せては返す音が、まるで歓迎の拍手のように。

瀬波の海は凪いでいる時でも力がある。寄せる波のリズムがゆっくりで、それが旅の時間の始まりを告げる音に思えてきます。

外観は大江戸温泉らしい安定感。過剰な華美さはなく、かといって寂しいわけでもなく、「海辺の温泉地に来たな」と思わせてくれる佇まいです。
ロビーへ。そして早速、この旅の主役に出会ってしまう。
館内に入ると、天井の高さと開放感のあるロビーラウンジが視界いっぱいに。

そして、その奥にある大きな窓。そこから見える海—これが実に素晴らしい。

チェックインを済ませて、荷物を置いたところで、ふと視線を奥に向けると、ラウンジの入り口に「14:00〜フリードリンクサービス」の看板が見える。

これを見た瞬間、今日の宿泊の中心が「ラウンジ」になると悟りました。

14時少し前。チェックイン手続きの後、すぐにサービスが始まりました。
14時からスタートのラウンジ。ここが汐美荘の“本領”だった。
ドリンクコーナーには、コーヒー、ジュース類、ソフトドリンク、そして「ビール」「ハイボール」「チューハイ」。

セルフ式で、好きなだけ楽しんでくださいというスタイル。

席に案内されるわけではありませんが、ほとんどの席から海が。特に海側のラインは人気でしたが、ちょうどタイミングよく席を確保できました。

―ビールを一口飲みながら海を見る。
―何も話さなくても、時間が自然と進んでいく。
―波の音は聞こえないはずだが、聞こえるような気もする。
それほど静かで、やわらかな空間です。

ビールの他に、ハイボール・チューハイサーバーもあり、これがまた美味しかった。苦味や角の強さがなく、海を見ながら飲むと本当にちょうどよい。
旅先の酒はどうしてこんなにうまいのだろう。
ラウンジの天井は高く、奥にはストーブ風の暖炉も。
火を眺める席もあれば、大テーブルでゆったりした作業ができそうな席もある。
子どもが遊べるようなゆるいスペースもあって、家族で過ごすにも優しいつくりでした。
夕陽の沈むラウンジ。旅をしていて良かった、と素直に思えた時間。
そして、夕方。この宿のハイライト、「夕陽の時間」がやってきます。

瀬波温泉は夕陽の名所として知られています。

晴れている日は真正面に沈む夕日が見られる。この日は雲こそあったが、充分に美しかった。

ハイボールを片手に窓に向き直ると、海の上に光の筋が一本伸びている。

遠くで波が跳ねるのが見え、それがオレンジ色に照らされていました。

娘が眺める窓の外の海と夕陽。それだけで、心がすっかり整えられていく。

夕陽を見送りながら、「素泊まりで良かった」と。

食事の時間に追われないからこそ、この景色を最後まで眺めることができました。
カラオケへ。娘は自由に、親は好きな歌を。
ラウンジを楽しんだ後は、館内のカラオケへ。大江戸温泉らしく早い時間帯は無料で利用できます。

親がマイクを持ち、娘は床に転がりながら遊ぶ。

あの自由さは子どもの特権だが、見ているこちらも気が抜けていく。

「歌って遊んで、また温泉へ行こうか」そんな軽さで時間を楽しめました。
そして温泉へ。瀬波の湯は、やはりいい。
汐美荘の温泉は最近のCMにも使われているらしく、期待していたのですが、その期待を余裕で越えてきました。

露天風呂からの眺めが圧倒的。海がすぐそこにあり、塩の香りがふわっと鼻をかすめる。湯面の揺れと波の揺れが重なって、ぼんやりと見入ってしまう。

泉質はさらっとした塩化物泉で、肌に優しく、入浴後はじんわりと温かさが。熱すぎずぬるすぎず、長く入っていられるちょうどよさ。

夕方の露天はさらに雰囲気があって、海風がすっと肌に触れるたび、湯の温度が心地よく感じられました。
夜のラウンジで締めの一杯。
温泉から上がったら、もう一度ラウンジへ。

暖炉の前の椅子に座り、またハイボールを一杯。

昼間とはまったく違う表情で、夜の海が静かに広がっている。

館内のライトが落ちていくにつれ、窓際の景色がスクリーンのようになる。

暗い海の向こうには、わずかな灯り。波は見えないが、その存在は確かに感じられました。
部屋に戻り、寝る前の一杯。
ラウンジ営業終了後、部屋に戻ってもう少しだけ。

新潟の地酒「大洋盛」。宿の近くの店で仕入れた酒。

優しい香り、柔らかい口当たりで、旅の夜にちょうどよし。

宿の音がゆっくり静まる中、日本酒を飲みながら、今日という一日を少しだけ振り返ってみる。

そしてまた思いました—この宿は“ラウンジで過ごす宿”だ、と。
まとめ
今回の汐美荘は、素泊まりという気楽さもあり、「海」→「ラウンジ」→「温泉」→「ラウンジ」→「部屋」という、とても贅沢で、そしてゆったりとした流れで過ごすことができました。
特にラウンジの充実ぶりは特筆すべきで、「海と夕陽を見ながら自由に飲む」という体験がここまで気持ちを豊かにしてくれるとは思いませんでした。まさに期待以上。
瀬波温泉の海、夕陽、湯、そして静かな夜。素泊まりでも十分すぎるほど満たされる滞在。
またあの時間を味わいに。そう素直に思える素晴らしい宿でした。