瀬波温泉の風に吹かれて
4月6日、日曜日。
瀬波温泉の宿へと向かい、ゆるやかな潮風を浴びながら車を走らせていた午前の時間帯。海沿いの道はどこか淡く、春の光ににじむようで、あの日の空気は今でもはっきりと思い出すことができます。
向かったのは 岩船港鮮魚センター。
新潟県村上市にある、地元の人にも観光客にも人気の鮮魚市場で、港町らしい活気が漂う場所です。
建物に入ると、近隣で水揚げされた魚介がずらりと並び、鮮度の良さをそのまま見せつけるように輝いている。朝の市場特有の、少し湿った空気と混じり合った磯の香りは、それだけで食欲をそそります。
今回訪れたのは、その一角にある フードコート。

観光地のフードコートというと、失礼ながら“簡易的な食事処”というイメージを抱きがちで、私自身も特別な期待はしていませんでした。

ただ、旅先ではこういう気軽さも良いものです。景色を眺めながら、さっとつまむように海の幸を味わえれば十分だろう、と、そんな軽い気持ちで席につきました。
海鮮丼、1,000円。― 油断していた私の舌を一瞬で目覚めさせた一杯 ―
注文したのは、もっともシンプルで、どこか“無難”に思えた 海鮮丼(1,000円)。

ところが、この選択が嬉しい誤算へと転じます。
受け取った丼を覗き込むと、その彩りにまず驚かされました。
厚めに切られ、淡く透き通る、軽く脂を含んだサーモン。そこにワサビとシソが添えられ、その横には艶のあるネギトロが小さく輝いている。
決して豪華絢爛というわけではありません。けれど、ひとつひとつのネタがまっすぐで、誠実で、いかにも“港の食堂”らしい新鮮さを宿している。
箸をつけてみると、ネギトロが柔らかく、舌の上でほどけるような食感。サーモンは脂が軽く広がり、きゅっと締まっていながら旨味が深い。とろりとした甘みが自然で、丼全体に輪郭を与えていました。
なにより驚いたのは、全てのネタが「しっかり仕事をしている」こと。
地方の市場にある気取らないフードコートだからこそ、素材そのものの良さが正直に伝わってくる。1,000円という価格が、控えめに感じられるほどの満足感でした。
瀬波温泉の旅に添えられた、小さなハイライト
瀬波温泉といえば、海沿いに広がる開放的な温泉街。

そこに漂うゆるやかな空気と、ほんの数分だけ離れた港町の活気。この温度差が旅を豊かにしてくれるのだと思います。
岩船港鮮魚センターの海鮮丼は決して華やかではありません。しかし、こうした素朴な一杯こそ、旅先の記憶に深く残るものです。
「全然期待していなかったのに、美味かった。」
この“裏切られ方”は、旅の醍醐味そのものと言えるでしょう。無防備な心に、まっすぐに飛び込んでくる美味しさ。
気取らない場所で、気取らない料理を食べ、それが抜群にうまい。この瞬間こそ、旅という行為の価値を静かに肯定してくれます。
また訪れたい、港のフードコート
食後、センターの外に出て潮風を吸い込むと、海の匂いとともに、丼の余韻がふわりと胸に残っていました。
「やっぱり鮮魚センターは侮れないな」と心の中で小さくつぶやく。
瀬波温泉とその周辺には、まだまだ紹介したい飲食店や食体験がたくさんありますが、この海鮮丼は、確かな存在感を持って旅の記録に刻まれました。
また村上に来たときは、ぜひ立ち寄りたい。
次は刺身定食にするか、それとも別の海鮮丼にするか。そんな想像をしながら、車をゆっくりと温泉街へ戻しました。
自分用メモ(業務記録)
- 日付:2025年4月6日(日)
- 場所:岩船港鮮魚センター フードコート
- メニュー:海鮮丼 1,000円
- 感想:期待以上に美味。鮮度良好。価格対満足度が非常に高い。
- 記事:旅ブログ用に作成(瀬波温泉の食事記録の1記事として整理)。