はじめに
9月17日、水曜日。
大阪・新世界。この街に足を踏み入れると、胸の奥にふっと灯がともるような、どこか懐かしい温度を感じます。
私にとっての新世界は、家族が増えるよりも前、年末年始の恒例行事として、毎年のように過ごしていた思い出深い場所です。
街の匂いも、空気の厚みも、人の声のざわめきも、すべてが体に染みついているよう。
こうして再び歩けることが、なんとも言えず嬉しくなります。
三桂クラブへ — なくなった将棋屋の面影を残して
今回訪れたのは、新世界の「三桂クラブ」。
かつては老舗の将棋屋さんが入っていた場所。その将棋屋が幕を下ろしたあとに、新しく串カツ屋として生まれ変わったお店です。
外観そのまま、ではありませんが、店の中には、当時の柱や屋根の一部がそのまま使われており、懐かしさがひょっこり顔を出すような、そんな風情があります。
何度この前を通ったことか。思い返してみても、数え切れないほど。思い出の場所が形を変えつつも残ってくれているというのは、やはり不思議と胸があたたかくなります。
この日の注文
セール中ということもあり、ビールが信じられない価格になっていました。
つい嬉しくなって頼んでしまったのは、年末の新世界を思い出したからかもしれません。
- ガリトマト 275円
- 馬力にんにく 275円
- 黒毛和牛とろホルモン串 98円 × 2
- 玉ねぎ串 143円
- トロ玉とん平焼き 638円
- アサヒ生ビール 209円 × 7
- キリン生ビール 209円 × 1
合計:3,101円。
この価格帯、この雰囲気、そしてこの新世界の空気。まさに「帰ってきたな」と実感する瞬間でした。
一品ずつゆっくり味わう
● ガリトマト
ほどよく冷えたトマトに、ガリの甘酸っぱさが合わさり、一杯目のビールを誘うスターターとしては完璧でした。新世界で食べるガリトマトは、なぜこんなに美味しいのでしょうか。
● 馬力にんにく
名前の通り、しっかりと力がみなぎる味わい。にんにくの香りがふわっと広がり、アサヒビールに実によく合います。
● 黒毛和牛とろホルモン串
一串98円という驚きの値段。とろっと脂が広がりながらも、しつこく感じさせない軽やかさがあり、気がつけば二本目に手が伸びてしまっていました。
● 玉ねぎ串
シンプルながら、甘みがじんわりと引き出されていて、ホルモン串との落差が実に食べ心地を整えてくれます。
● トロ玉とん平焼き
ふわっとした生地に、豚肉の旨味。食べ進めるごとにお祭りの夜のような気持ちになり、大阪らしさをしみじみと感じることのできる一皿でした。
● 生ビール
そして、間に挟むビール。アサヒを中心に、途中キリンもいただきつつ、7杯、8杯と進んでいくうちに、気持ちがほどけるような、ゆるやかな酔いが訪れます。
変わってゆく街と、変わらない気持ち
新世界は、ここ数年で大きく姿を変えています。
観光地として賑わいが増え、店舗も入れ替わり、昔のままではいられなくなった部分も多いのでしょう。
それでも、こうして「味のある場所」が残っていると、なんだか心がそっと落ち着きます。
娘が生まれ、家族が増えた今となっては、昔のように年末年始をここで迎えることは難しいかもしれません。
けれど、この街の匂いや温度は、変わらず胸の奥に残っています。
そして、その記憶をなぞるようにグラスを傾ける時間は、私にとって、とても大切なものです。
おわりに
三桂クラブで過ごした一夜は、懐かしさと新しさが同時に押し寄せてくるような、不思議な心地よさがありました。
変わりゆく街の中でも、自分の中にだけ変わらず残るものがある。
そのことに気づかせてくれる夜でした。
自分用メモ
- 記事の方向性:新世界の“思い出語り”を軸にしつつ、料理の描写は繊細に。
- 写真を入れる際は、店内の柱・屋根の「当時のまま」を示す部分に焦点を。
- 次回は通天閣周辺も軽く触れて、シリーズ全体の広がりを持たせたい。
- 「旧正月を新世界で過ごした話」も別記事として書けそう。
- 生ビールのセールは他店も調査すると比較記事が作れる。