はじめに
飲酒という行為には、ある種の“リズム”が存在するように思います。
たとえば、乾杯から始まる最初の1時間は、場の熱と会話の勢いでどうしてもペースが速くなりがちです。その時点で、体内のアルコール濃度は急上昇し、血中の水分バランスは一気に崩れます。
ここで「水を一口でも差し込む」かどうか。それが、翌朝の世界を分ける分岐点になります。
今回の実験
夜8時、軽めの食事とともにスタート。
ビールを中ジョッキで2杯、日本酒を2合。そのあと、ジンのソーダ割りへと移行。
250mlのグラスを約5杯、ゆっくりと。そして、各グラスの間に必ず「常温の水をコップ半分」飲むようにしました。
いつもと違うのは、水を“まとめて”ではなく、“リズムに組み込んだ”こと。つまり「お酒 → 水 → お酒 → 水」という往復を、できるだけ意識的に保つことです。
翌朝の体調
驚くほど、軽やかでした。頭痛はなく、胃のむかつきもなし。
むしろ、目覚めの時点で“軽い空腹感”を感じたほどです。これは肝臓がアルコール処理に追われすぎず、余裕をもって代謝を進めた証拠といえるでしょう。
また、トイレに行く回数が多かったことで、体内にアルコールが長く滞在しなかったのも大きな要因です。翌朝の尿の色も淡く、脱水のサインが見られませんでした。
科学的な補足
アルコールを分解する際、肝臓ではアルコール脱水素酵素(ADH)とアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が働きます。
この過程で大量の水が消費されるため、体内の水分が不足すると分解効率が下がり、アセトアルデヒドが体内に残りやすくなります。
つまり、途中で“少しずつ水を足しておく”ことは、酵素の働きを助け、肝臓の負担を和らげる自然なサポートになるのです。
体感としてのリズム
飲んでいる最中に水を飲むという行為は、一見テンポを壊すように思われます。
しかし実際には、むしろ会話や食事の流れを落ち着かせ、「あ、今、自分は飲んでいる」という自覚を取り戻す時間にもなります。
この“リズムの間”が、体を守る最良のバリアです。翌朝の身体感覚にまで波紋を残すほどの、小さな習慣。
次回予告
次回は、水だけでなく「塩分とミネラル」の補給について検証してみたいと思います。
アルコールによって体から抜け落ちるものを、どう補い、どう翌朝の快適さへとつなげるか。科学的な視点と、夜の実感の両面から掘り下げていきます。
次の一杯を、少しだけ丁寧に。その間に挟む「水の半分のコップ」が、翌日のあなたを救うかもしれません。