「静けさの温度」
―― 火曜日、家族とともに。ある銭湯にて ――
火曜日は塾の定休日。仕事の手を休め、家族と過ごす時間を大切にする日です。
この日は、妻と一歳の娘を連れて、近くの銭湯へ足を運びました。
開業から十五年ほど経つこの温浴施設は、派手さこそないものの、どこか肩の力を抜かせてくれるような安心感があります。館内も丁寧に手入れされており、訪れるたびに、地元に根づいた温もりのようなものを感じます。
写真①:銭湯 外観(青空と暖簾、家族連れの影)
靴箱に靴を入れて受付をすると、スタッフの方が娘に笑顔で声をかけてくださいました。こうしたちょっとしたやりとりも、この場所の魅力のひとつです。
浴場へ向かう途中、娘はきょろきょろと周囲を見渡しながら、興味津々の様子。もともと私たち夫婦はふたりとも無類のお風呂好きなのですが、娘にもどうやらその気質が受け継がれているようです。
妻と娘は女湯へ、私は男湯へ。湯船にゆっくりと身を沈めると、心身ともにほどけていく感覚が広がります。控えめな照明と、湯気のなかに漂う静けさ――こうした時間を持つことで、日々の緊張が緩む気がいたします。
湯で身体が温まったあとは、いつものようにサウナへ。富士見の湯のサウナは、しっかりと熱が入っておりながらも過度ではなく、じんわりと深いところから汗をかかせてくれます。
写真②:サウナ室と水風呂(木の質感、落ち着いた照明)
数分後、水風呂へ身体を沈めると、一気に意識が研ぎ澄まされるよう。そのあとの外気浴では、ちょうど風が吹いてきて、火照った肌に涼しさが心地よく沁みました。
夕方の柔らかい光に包まれて、「生きてるなあ」と、少し大げさですが、そんな感覚がよぎる時間です。
湯から上がり、脱衣所で身支度を整えると、妻と娘が先に休憩スペースに出ているのが見えました。娘はまだまだ遊び足りない様子で、タオルを首にかけてニコニコしながら、小さな足でふんふんと這いずっています。湯の時間が本当に楽しかったのでしょう。妻も笑いながら「ずっとご機嫌だったよ」とひと言。
私は売店で瓶ビールを一本。火照りが残る頬をぬぐいながら、ゆっくりと腰を下ろし、
ひと口目を喉へ流し込みました。
写真③:湯上がりのビールとベンチ(娘の小さな靴が横に)
炭酸の弾ける音と、柔らかな疲労感。娘が傍らで静かにミルクを飲んでいる姿を眺めながら、「こういう時間が、何よりの贅沢かもしれない」と思いました。
帰り道、娘はすっかり眠ってしまい、ベビーカーのなかで小さな寝息を立てておりました。妻と顔を見合わせて、「また来ようか」と自然に言葉が出る。そんな一日でした。