法人設立をひとりでやってみた話(その四)

法人設立をひとりでやってみた話(その四)

〜通帳ができる日〜

6月16日。ついに、法務局から「登記が完了しました」との通知が届きました。

一通のメール。そこに添付されていたのは、会社法人等番号が記載されたPDFファイル。その瞬間、これまでのオンライン格闘の日々が、報われたように思えました。

PDFを開いて、しばらくじっと画面を見つめる。たしかに「株式会社」という文字がある。たったそれだけのことなのに、まるで自分の名前が辞書に載ったかのような、不思議な感慨がありました。

さて、登記が終われば、次は法人口座の開設です。

いくら法人になったとて、お金の出入りが私の個人口座では格好がつきません。いわば「会社の財布」をちゃんと用意する必要がある。この日は、書類をひとまとめにして、市内の信用金庫まで自転車で向かいました。

こちらの信用金庫には、以前から創業支援事業でお世話になっていたこともあり、ご相談しやすい、信頼できる場所でもあります。

「こんにちは。法人の口座開設をお願いしたいのですが」

窓口の方は変わらず丁寧で、以前お会いした担当の方もいらして、あたたかく迎えてくださいました。

とはいえ、初めての法人ということもあり、一定の審査が必要になるとのこと。

「業務内容を簡単にご説明いただけますか?」

学習塾の経営、ブログや動画を通じた地域の紹介、人材育成における研修事業、そして飲食や物販も視野に入れていること。定款に沿って、ゆっくりと言葉を選びながらお話ししました。

「では、社内で審査のうえ、開設のご連絡を差し上げます」

通帳がすぐに手渡されるわけではないことは知っていたのですが、その場で話をしながら、少しずつ法人としての信頼を築いていく、そんな実感がありました。

信用金庫を出たあと、私は塾に帰り、ホットコーヒーを一杯、ゆっくりと飲みました。

小さな一歩ではありますが、確かに名前を持ち、口座をつくり、これから活動の舞台を広げていくための準備が、またひとつ進みました。

法人をつくるというのは、書類の山と格闘しながら、信頼を一つずつ積み上げていく作業でもある。けれどその繰り返しに、どこか「地に足のついた喜び」のようなものがあることを、静かな午後に、ふと思ったのでした。

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