〜修正・再提出の果てに〜
登記申請を終えたと思ったその次の日の朝。マイナンバーカードとカードリーダーをそっと片付け、ようやく本業に集中できる…そう思った矢先のことでした。
その日のお昼ごろ。法務局からのメール通知が、何気なく開いた受信箱に届いておりました。
「申請内容に不備がございましたので、ご確認のうえ修正願います。」
…思わず、あごに手をあてて黙り込んでしまいました。
そこからは、ひたすら「訂正」の日々。提出した内容の一部が、法務局の審査にひっかかりまくりました。
たとえば、「代表取締役就任の氏名のフリガナが全角カタカナで統一されていない」だとか、「払込証明書の通帳コピーに電子証明がなされていない」だとか、ひとつひとつは些細なことに見えても、公的書類にはすべてが大切な要素。
何より、修正にはまた電子署名が必要となるため、再びマイナンバーカードとカードリーダーを引っぱり出し、例の“あのソフト”と再度向き合うことになりました。
電子署名というのは、実に大変な仕組みです。マイナンバーカードのパスワード入力を3回間違えたりすると、簡単に門前払いを食らいます。
深夜のリビングで「もう再修正は勘弁してくれ…」とお祈りをしながら、マウスを握る指にじわりと汗がにじんでおりました。
ちなみに、妻の署名も必要だったのですが、娘を寝かしつけた直後にお願いするわけにもいかず、「タイミング」というもう一つの難関も立ちはだかりました。
修正→電子署名→再提出→再び不備→さらに修正……これを三巡ほど繰り返した頃には、もう私は“ワンストップ”という言葉に何とも言えない感情を抱くようになっておりました。
それでも、少しずつ画面のエラー表示が消えていき、最終的に「申請完了・受付済」と表示されたときの安堵といったら、どんなサウナの水風呂にもかなわない、どんなビールの一口目にも敵わない、静かな癒しがありました。
こうして、登記申請は無事に受理され、当法人は晴れてこの世に生まれることになります。
作業の大半はパソコンの前で、静かに、地道に、ひとりで行ったものですが、それでも、家族の生活音や、娘の寝息を感じながらの作業は、どこかあたたかく、特別な時間でもありました。