箱根・小田原・秦野で体験した「移動できない」という現実
2019年10月12日。後に「令和元年東日本台風」と呼ばれることになる、台風19号が関東を直撃。
この日は、箱根へ一泊二日の予定。娘が生まれる前、会社を立ち上げる前、まだ会社員だった頃の話です。
今振り返ると、この台風は「自然災害」という言葉では片付けられないほど、温泉地・鉄道・人の暮らしに、静かで重たい問いを投げかけていたように感じる。
今回は、自分自身の体験を軸にしながら、台風19号と温泉地、そして交通インフラの関係について、少し掘り下げて書いてみたいと思います。
台風19号という存在
台風19号(Hagibis)は、日本の観測史上でも屈指の「雨台風」。
特に箱根周辺では、24時間雨量が1000mmを超えた地点があったとされている。
月の降水量が数百ミリであることを考えると、一日で「数か月分の雨」が降った計算。
川があふれ、斜面が崩れ、人間が「ここまでなら大丈夫」と思っていたラインを、あっさりと超えてきた台風でした。
温泉地・箱根が抱える宿命
箱根は、温泉地としては理想的な場所。
・山があり
・谷があり
・川が流れ
・地熱がある
しかし、それは同時に、水と土砂の影響を最も受けやすい土地でもあるということ。
実際、台風19号では、
- 河川の増水
- 川水の温泉施設への流入
- 配湯設備の停止
といった影響が各所で発生。
自分たちが宿泊していた宿でも、「温泉に川の水が入り、使用できなくなる可能性がある」という連絡が入り、最終的には別の施設への移動という判断がなされた。
温泉というのは、自然の恵みであると同時に、自然に最も左右される存在なのだと、強く感じた瞬間でした。
箱根登山鉄道の被害
台風通過後、箱根登山鉄道は大きな被害を受けた。
線路下の地盤流出、橋脚の損傷、土砂崩れ。特に箱根湯本〜強
羅間は長期間にわたり運休。
「バスはあるけれど、非常に不便。」
そんな状況が、しばらく継続。
観光地において、鉄道が止まるということは、街そのものが止まるということでもあります。
そして、小田急線・渋沢〜新松田間
個人的に、この台風で一番「これは大変だ」と感じたのが、小田急線・渋沢〜新松田間のトンネル崩落。
箱根から小田原へ戻り、さて帰ろう、と思ったところで知った事実。
渋沢〜新松田間のトンネルが崩落・小田急線は数日間、不通
これは、箱根観光という枠を超えた、生活インフラ問題の発生。
秦野方面へ帰る人たちは、
- バスに振り替え
- 長時間待ち
- 大混雑
そんな状況に直面。
鉄道が一本止まるだけで、人の流れ、生活のリズム、判断のすべてが狂う。
「移動できない」という事実は心理的な負担となる、と実感しました。
それでも、人は動く
印象的だったのは、そんな状況の中でも、私は意外と冷静だったこと。
・バスが混むなら、空くまで待てばいい
・終電までは動いている
・ならば、少し飲んで待とう
結果的に、空いたバスで、静かに、問題なく帰宅できたのです。
災害時、「焦らない判断」ができるかどうかは、経験と心の余裕に左右されるのだと思います。
台風と温泉地は、切り離せない
台風19号は、箱根という温泉地に、
- 自然の厳しさ
- インフラの重要性
- 観光と生活の境界
を、はっきりと突きつけました。
温泉地は、「非日常」を提供する場所だが、その裏側には、日常を支えるインフラが確実に存在している。
- 鉄道
- 道路
- 水
- 電気
そのどれか一つが欠けるだけで、温泉地は簡単に孤立してしまうのです。
いま、振り返って思うこと
あの日、台風の中で箱根へ向かったことは、正直、無謀だったと思う。
しかし、あの経験があったからこそ、
- 温泉地の本当の姿
- 災害時の判断
- 移動できることのありがたさ
を、身をもって知ることができたのも事実。
旅は、楽しいだけのものではありません。
時には、「考えるきっかけ」を与えてくれます。
台風19号と箱根。
あれから何年も経った今でも、ふと思い出す、大切な記憶です。