はじめに
お酒を飲んだ翌朝、「なんとなく身体がだるい」「力が入らない」「頭がぼんやりする」といった感覚に包まれることがあります。
この“だるさ”や“無気力感”の正体のひとつに、塩分とミネラルの不足があるといわれています。
体内の水分バランスを支えるのは、ナトリウムやカリウム、マグネシウムといった電解質。アルコールを分解する過程で、これらが想像以上に体外へ排出されてしまうのです。
アルコールが「脱塩」を引き起こす理由
アルコールを摂取すると、脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモン(ADH)が抑制されます。このホルモンは、本来であれば腎臓で水分を再吸収する役割を担っています。
しかし、ADHが抑えられることで体内の水はそのまま尿として排出されてしまう。結果として「脱水」が進み、それに伴ってナトリウムやカリウムといった塩分も一緒に失われていくのです。
つまり、単に「水をたくさん飲む」だけでは、実はバランスがとれません。体液の浸透圧を保つためには、水分と塩分を同時に補給する必要があります。
翌朝の「塩分リカバリー」のすすめ
個人的な実験として、飲酒後の翌朝に味噌汁を2杯飲む習慣を続けています。
すると、不思議なことに、頭がすっきりとし、体が軽く感じられる日が多いのです。これは味噌汁に含まれるナトリウムやミネラルが、まさに脱水状態を和らげてくれているからでしょう。
特に二日酔いの朝は、単純な水よりも「少し塩味を感じる飲み物」の方が、体にスッと入っていく感覚があります。
塩分が加わることで、水分が体内に保持されやすくなり、血流も安定してくるのです。スポーツドリンクや経口補水液も理にかなった選択肢ですが、やはり日本人にとっての王道は味噌汁。
わずかに温かい汁をゆっくり飲むことで、胃腸もやさしく目覚めていきます。
ミネラルを意識するということ
塩分のほかにも、ミネラル補給は重要です。
特にカリウム、マグネシウム、カルシウム。これらは筋肉や神経の働きを支え、体のリズムを整える役割を果たします。
アルコールによってこれらが失われると、手足のだるさや筋肉の張り、さらには動悸のような違和感を覚えることがあります。
これを防ぐために、飲酒後や翌日の食事では、以下を意識的に摂るとよいでしょう。
・バナナ(カリウム)
・豆腐や海藻(マグネシウム)
・小魚や牛乳(カルシウム)
味噌汁に豆腐とわかめを加える―それだけでも、立派なミネラルリカバリーになります。
「塩分+ミネラル」補給で変わる翌朝
水を飲むだけではなく、塩分とミネラルを意識することで、翌朝の目覚め方が変わります。
体の内側からエネルギーが戻ってくるような感覚。その回復の速さは、単なる水分補給の比ではありません。
アルコールによる二日酔いは、単なる「毒抜き」ではなく、体内のバランスを取り戻す営みでもある。そう考えると、味噌汁をすする一杯にも、深い意味が感じられます。
次回予告
次回は、第5回。
「肝臓の働きを助ける“食べ方”」をテーマにお届けいたします。
飲みすぎた夜の翌朝、どのようにして身体を整えるか―二日酔いを“科学する”旅は、もう少し続きます。