静寂と灯、ふたりで整える夜の時間——露天の風とグラスの音
夕食を終え、ひと息ついた夜の時間
この日の締めくくりは、私たち夫婦ふたりで過ごす“ちょっとだけ特別な夜”でした。
娘は祖父母と部屋でゆっくり過ごしてくれていたので、私たちは外の空気を吸いに、そっと部屋を出ました。
向かうのは、宿の名物である貸切の野天風呂と、バーラウンジ。この旅の記録をどうまとめるか、そんな話を交えながら歩いた夜道には、夏の湿った風と、どこか懐かしい灯りが揺れていました。
野天の湯へ、離れに向かう夜道
貸切風呂は、宿の本館から外へ出て、約200メートルほど離れた場所にあります。
貸切風呂への道のり(ホテル内)
貸切風呂への道のり(屋外)
風呂場の建物は完全な離れとなっており、夜の暗がりの中を、案内板を頼りに歩いていく形。場所としてはやや不便と言えるかもしれませんが、その道のりすら、まるで“温泉へ向かう儀式”のような時間に変わります。
貸切風呂への道のり(湯屋内)
到着すると、湯屋がぽつんと佇んでいました。扉を開けて中へ入り、内側から鍵をかける仕組み。予約も鍵の受け渡しも不要という手軽さもありがたい。
静寂の中、湯と風と星だけが
脱衣所を抜けると、そこには、まるで小さな神社のような、野趣にあふれた露天風呂。塀に囲まれながらも、頭上は開けており、夜空がはっきりと見える。遠くから波の音がかすかに聞こえ、蝉の声も、風に混じって響いていました。
湯温としては長く浸かっていられるちょうどいい温度。縁に背中を預け、夫婦それぞれ、黙って湯に身をゆだねました。
湯の中で、ふたりだけの作戦会議
贅沢な空間で作戦会議中
貸切の湯の中では、自然と「今回の旅、どう記事にまとめようか」という話に。「kei3.blog」としての立場を考えると、家族旅行であっても、しっかりと“読者に伝える形”に整えていきたい。そんな意識がふたりの中にあるのは、おそらく無意識の延長線なのかもしれません。
「テント張って、砂遊びから始まるのがいいかな」「うん。あとラウンジ。あれはしっかり書いておきたい」
お湯につかりながら、小さな打ち合わせが、静かに進んでいく。たくさん喋らなくても、目線と間合いで意図が伝わる。そんな空気が、今の自分たちにはあるような気がしました。
湯あがりのバータイム、ジムビームで乾杯
露天風呂を出たあとは、夜風を受けながら再び本館へ。
館内に戻ると、5階にあるバーラウンジがまだ灯っていました。23時までの営業とのことで、まだ少し時間がある。
せっかくなので、もう一杯だけ
このバーには、バーテンダーが常駐しており、オーダーにも丁寧に対応してくれます。
席に座ると、すぐににこやかに声をかけてくださり、「ジムビームのハイボール」をオーダーしました。
湯上がりの一杯はジムビームのハイボール
氷の音が、夜をゆるやかに揺らす
カウンター越しには、グラスの音が静かに響き、他の宿泊客もそれぞれにグラスを傾けながら、楽しそうな会話に花を咲かせていました。
バー全体が、程よい賑わいと落ち着きのバランスを保っており、大人の旅らしい空気感に包まれていました。
妻はジントニックで軽やかな甘みの一杯。私はジムビームのハイボールを。炭酸の強さとバーボンの香ばしさが、海辺の夜にぴったりと寄り添ってくれました。
旅の静けさの、いちばん深いところ
バーという落ち着いた空間
グラスを片手に並んで座るバーの椅子。そこに沈み込むように身体を預けていると、昼間に感じていた時間の速さとは、まるで違う世界に入ったような気がしました。
「ここに泊まってよかったね」「うん。ほんとにそう思う」
ふたりの言葉は短く、音楽に溶けていきました。
ブログを書くという営みの先にあるのは、こうした“言葉にならない時間”なのかもしれません。読者に向けて書く記事であっても、私たちが本当に届けたいのは、きっとこういう空気なのだと、あらためて感じる夜でした。