はじめに
10月25日、土曜日。Oasis東京ドームライブ。
ライブはただ音を聴きに行く行為ではない。空気、匂い、声、酒の残り香、肩を並べた隣人の息遣いまで含めて「一晩の出来事」として記憶される。
特にOasisのようなUKロックは、酒とともに体をほぐし、声を出すことによって完成するのだ。
だから私はいつも「ライブ前のビール1〜3杯」を小さな儀式としている。
今日はその、東京ドームでのOasis公演に向けた“ビアバーでのグランド・プラン”を細部まで詰めることとする。
座席はSS席。チケット代は36000円と値段も張る夜となる。よって、たった一杯や二杯の選び方で、何十万円分の期待が違ってくる(気がする)のだ。
ここでは安全、快適、でも気分はしっかり上げる―その黄金比を作っていきたいと思う。
1)劇場周辺で選ぶビアスポットのタイプ(UK感を出すならこの三択)
東京で“UKらしく”ビールを飲むなら、現実的には下のタイプから選びたい。どれを選ぶかで気分が変わるので、目的(静かめに集中・ガヤガヤで気分を上げる・しっかり食べて体力を整える)に合わせて選ぶことにする。
- A:ブリティッシュパブ系(パブ料理とドラフトのビターやエールが揃う)
→ UK気分をダイレクトに楽しめる。パイントで乾杯したいならここ。店員の“オーダーのさばき”も早いところが多く、短時間勝負にも向く。 - B:クラフトビアバー(世界のIPAやペールエールが揃い、英国系クラフトもある)
→ 飲み比べが楽しい。味の幅を楽しみたい人向け。量を自分でコントロールしやすい(ハーフパイントの提供がある店が多い)。 - C:ビアレストラン(しっかり座って食事+ビールで下地を作る)
→ しっかり食べて体力を残したい場合。長時間のライブは持久戦となる。時間の余裕があるならここが最も安定する。
※選ぶ際の実用的ヒント:立地的には「ドームからの移動時間」を考えて店を決めたい。電車で行く場合、行動動線(駅→店→ドーム)がスムーズなところを。時間が読めるなら店は一軒に絞って予約を入れておくのが良さそうだ。
2)到着〜入店〜退店までの時間配分(具体プラン)
ライブ開始時間は18:30。現実的で安全なスケジュールの一例を提示。ここでは「ライブ開始2時間前に現地着」を目安にしている。
具体プラン(開演18:30)
- 16:30 水道橋駅着。荷物はコインロッカーかクロークに預ける(軽装で)。
- 16:40 ビアバー入店。着席(席がなければカウンター)。乾杯は軽めに。
- 16:40〜17:10 ファーストラウンド(1杯目)+軽いつまみ。会話はライブの“予想共有”に。
- 17:10〜17:45 セカンドラウンド(2杯目)。ここで味の方向性を決める(重めに寄せるか、炭酸でテンポを上げるか)。
- 17:45〜17:50 支払い、トイレ、最終チェック(チケット・携帯バッテリー・耳栓の有無)。
- 17:50〜18:15 ドームへ移動、入場列に並ぶ。
- 18:15〜18:30 入場/席着。軽く水を一口。開演待ち。
このスケジュールだと、ビールは2杯前後、つまみ少量で「ほろ酔い」になる想定だ。
SS席の値段と雰囲気を考えると、ピークでテンションを上げ過ぎないのが上質な楽しみ方。とはいえ、当日の気分により、調整は自由に行う。
3)ビールの選び方 — Oasis(UK)に合わせるならこれを
Oasisはブリティッシュロック。UKらしい“土の匂い”や“パブ的な親密さ”を引き出すには、以下のスタイルが合う。味のイメージと場面での効用も併記する。
スタイル別・推奨理由
- English Bitter / Best Bitter(セッションエール)
- 味の印象:モルトの甘みと心地よいホップの苦味。アルコール度は低め(3.5–4.5%)。
- 場面効果:ゆったりとした“温かさ”が喉に残り、歌を歌う体力を温存しつつ気分が上がる。パイントで頼むと「英国感」をガッチリ得られる。
- Pale Ale / English Pale Ale
- 味の印象:フルーティーさと穏やかな苦味のバランス。飲みやすい。
- 場面効果:開演前のテンション作りに最適。音楽の高揚に寄り添いやすい。
- IPA(英国系は控えめな苦み)
- 味の印象:ホップの香りと苦味。近年は米国スタイルで強烈な苦みが主流だが、UK系IPAはより丸い。
- 場面効果:気持ちを鋭くする。ライブで声を張るための“切れ”を作る。飲み過ぎないこと。
- Stout / Porter(短時間で一杯程度)
- 味の印象:ロースト香、チョコレートやコーヒーのニュアンス。やや重め。
- 場面効果:秋の夜、落ち着いたウォームアップに。深く味わうよりも一口で「土臭さ」を味わう感覚を。
- Cask Ale(ドラフトの古典的な英国生樽)
- 味の印象:ガス圧が低く丸い口当たり。味が柔らかい。
- 場面効果:“現地のパブ体験”を感じられる。ゆっくり時間があるならこれから始めると気持ちが整う。
実践的オーダー例(二杯プラン)
- 第一杯(ファーストラウンド):English Bitter(ハーフパイント〜パイント)→ 体の緊張をほどよくほぐす。
- 第二杯(セカンドラウンド):Pale Ale か軽めのIPA(ハーフ)→ 高揚感を整えるために炭酸やホップの香りが欲しい。
- オプション第三杯(余裕あるなら):Stoutの一口またはスナックと合わせる小さなグラス。
4)食べ物の選び方 — ライブ前の“匂い対策”とエネルギーの確保
ライブ前のつまみは二つの役割を持つ:(A)胃袋に優しく持続的なエネルギーを補給すること と (B)周囲に迷惑をかけないこと(匂い・音)。ここを満たすメニューを。
推奨メニュー(ライブ前に最適な順)
- ローストポテト/ポテトフリット(塩控えめ)
→ 炭水化物で持久力を確保。匂いは比較的中立。 - 薄切りローストビーフ or チキンの一口
→ タンパク質で声を出す体力のベースを作る。ニンニクや香草ソースは控えめに。 - ピクルス類 or 軽いサラダ
→ 口直し。酸が油を切るため、次の一杯が重くならない。 - チーズの薄切り(強烈なブルーチーズは避ける)
→ 味を豊かにするが、匂いの強い種類はNG。 - ナッツ(素焼き)
→ 小腹を満たす、噛む音が小さい。 - デザートは避ける(眠気に繋がるため)
避けるべきメニュー
- 揚げ物の強烈な匂い(ニンニク唐揚げ、カレー風味のポテトなど)
- 生にんにくを大量に使うソース(ガーリックトーストなど)
- 甘ったるいデザート類(血糖値の急上昇→急降下で眠気が来ることがある)
5)酔いのペースと量目安 — 「ほろ酔い」への数値化
「ライブに行く前に酔っておきたい」―この気持ちは大切だ。ただし、ここでの肝は“ほろ酔い”であって“ヘロヘロ”ではない。以下は実務的な量。
体格別ざっくり目安(成人、健常者を前提)
- 小柄〜普通体型(日本人平均):アルコール純量で約10〜15gを目安に最初の一杯(ビール約200〜300mlのアルコール度5%で10〜15g相当)。2杯目は同程度。合計20〜30gが“良い塩梅”。
- やや大柄〜大柄:最初の一杯200〜400ml、2杯目をハーフパイント程度。合計30〜40gが目安。
(補足:純アルコール量→ビール500ml(5%)=25g程度。わかりやすく言うと「ハーフパイント〜パイント/2杯で1本弱のビール」で計算)
実用的なルール
- 一杯目は着席してゆっくり15〜25分で飲む(急がない)。
- 二杯目は入場前30〜35分でハーフパイント程度(ここでピークを作らない)。
- 喉が渇いた時は水を間に一杯入れる(酔いのコントロールに絶大)。
- アルコール度の高いもの(ハイアルコールIPAやバーボンなど)は少量で済ます。
大事なのは“ゆっくりペース”と“水をはさむこと”。ライブは2時間以上、声を出す体力も要るので飲み過ぎは大敵。
6)所作とマナー — バーでの振る舞い
ライブ前は周りに迷惑をかけないことが最優先。特に土曜の夜、混雑する店では以下の点に気をつける。
- 席で大きな声で歌わない(盛り上がる気持ちは分かるが店内は公共の場)。
- 飲み残しの処理:入場前に飲み切るか蓋をして持ち帰る。店のルールに従う。
- 注文は手早く:店員さんに負担をかけない。混雑店なら事前にメニューを決めておく。
- 周囲客への配慮:ライブ話で盛り上がるのは良いが、独り占めの大声トークは避ける。
7)入場前の最終チェック(絶対やることリスト)
ドームへ入る直前にやるべき短いチェックリスト。これでSS席体験は格段に快適になるだろう。
- 飲み残しはないか/水は蓋をしっかりしているか
- トイレは済ませたか(行列対策で早めに)
- 水を一口飲んだか(喉の保湿)
- 荷物は軽く、必要なもの(チケット、身分証、モバイル充電など)は手元にあるか
- 携帯カメラ・録画に関する劇場ルールを再確認したか(ライブ会場は撮影厳禁)
8)もし時間が押したら/二次会の提案
ライブ前に時間が押してしまった時の対処法。これは意外と役に立つ。
- 列に並びながらの水:とにかく水を飲んで酔いを抑える。
- 店を切り上げる一言フレーズ:「チケット時間が迫ってるのでお会計で」→ サッと支払い。
- 二次会でのプラン:公演後の余韻を楽しみたいなら、帰り道にある英国パブや24時間営業のバーを下見しておきたい。
9)Oasisという音楽とビールの相性(短い所感)
Oasisは「泥臭さ」と「ポップさ」を同居させた音楽だ。
パブのジョッキで飲むビターは、その泥臭さを補強する。ギターのリフに合わせてセッションエールを流し込むと、体が自然にリズムを取り、声が出る。
大切なのは「気取らない酒」を選ぶことだ。高級すぎるワインや香りが過剰なカクテルは、Oasisのストリート感にはそぐわない。
だからこそ、英国のパブで飲むようなエールやペールエールが気分を作る最短距離だ。
10)最後に―大人の儀式としての「プリドリンク」
ライブ前のビールは、ただ酔うためのものじゃない。自分の身体と気持ちを整え、周囲と共有するための短い儀式だ。
SS席という“投資”をして手に入れた夜ならなおさら、細部を大切にしたい。量は控えめに、質で勝負。音楽に寄り添うビールと、匂いを抑えたつまみ、そして何より隣の人を尊重する振る舞い。
これを守れば、Oasis体験はより鮮やかになるだろう。