はじめに
お酒を飲んだ翌朝、どうしてこんなにも体調の差が出るのだろうと、いつも不思議に思います。
同じ量を飲んでも、ある日は軽く、ある日は重い。二日酔いというのは、単にアルコールが残っているというだけではなく、体の中のバランスや反応の結果なのかもしれません。
最近は特に、「水分の摂り方」に注目しています。飲みながら、あるいは飲み終えたあと、どのタイミングでどれくらいの水を飲むと翌朝が変わるのか。
経験ではなく、少し科学的な視点から観察してみようと思い、今回はその第一回として記録を残すことにしました。
今回の夜
この夜は、秋の気配が少しずつ近づいてきた頃でした。空気が乾いていて、喉の渇きを感じやすい夜です。
まずはビールを一杯。泡の冷たさが、仕事終わりの頭を静かにほぐしてくれます。続いて日本酒を二合。ぬる燗で、米の香りを確かめながら。最後は泡盛のソーダ割り。ミネラルの苦味が、夜の締めくくりにちょうどよい具合でした。
いつもと違ったのは、「水を意識的に摂る」ということだけです。250ミリほどのグラスを手元に置き、30分に一度ほど、静かに一口ずつ。
飲み終わる頃には、合計で5杯ほど—およそ1リットル少々の水を飲んでいました。
翌朝の体
驚いたのは、翌朝の体の軽さです。
目を覚ました瞬間に感じたのは、「胃の静けさ」でした。あの重たく鈍い不快感がない。
頭もすっきりとしていて、特に痛みやぼんやり感もありません。完全に爽快というわけではないものの、「二日酔いの気配」はかなり遠くにありました。
正直、少し拍子抜けするほどでした。
泡盛を含む蒸留酒を混ぜた夜は、いつもならもう少し重たい朝を迎えるのです。けれども、この日は体の中のリズムがうまく整っていたように思います。
水の役割を考える
アルコールの分解には、肝臓の働きが欠かせません。その過程では多くの水分が使われます。
さらにアルコールには利尿作用があるため、飲めば飲むほど体の水分が減っていきます。つまり、飲酒とは「脱水を進める行為」でもあるのです。
水を飲むことの本質は、単にアルコールを薄めることではありません。体内の循環を保ち、代謝を助け、肝臓が働きやすい環境を整えてあげることです。
そして何より、「血の巡り」を穏やかに保つこと。これが、翌朝の軽さに直結しているのだと感じます。
興味深いのは、水を飲むタイミングによって効果が大きく変わるという点です。酔いが回ってから一気に飲むよりも、飲んでいる最中から少しずつ補う方が、体が自然に対応してくれます。
血中アルコール濃度の上昇が緩やかになり、同時に下がっていく。この「ゆるやかな波」をつくることこそ、二日酔いを防ぐ鍵になるようです。
経験から見えてきたこと
今回のように250ミリの水を5杯。これを、飲み会の最初から最後まで、意識的に分散して飲みます。
ビールを飲みながら1杯、日本酒を一合飲み終えたころにもう1杯。泡盛に切り替えるときに1杯、酔いを感じた瞬間にもう1杯。最後に締めの水を1杯。
このくらいのペースが、自分にはとても合っていました。
翌朝、喉の乾きもなく、頭もすっきりしています。アルコールによる利尿で失われた水分を、ちょうど良いタイミングで補えているのだと思います。
科学的に見ると
血中アルコール濃度は、飲酒量や体重、肝臓の処理能力によって決まります。水を多く飲んだからといって、アルコールが早く抜けるわけではありません。
しかし、血中濃度の上昇をゆるやかにすることで、体への負担を減らすことができます。
また、脱水を防ぐことは、頭痛や倦怠感を軽くする上でも重要です。
アルコールの代謝で発生するアセトアルデヒドを分解するには、血流と酸素が欠かせません。水をしっかり飲むことで循環が保たれ、肝臓の働きがスムーズになる。
その結果、翌朝がずっと軽く感じられるのでしょう。
静かな夜の終わり
深夜、最後のグラスを置いて、少し温い水を飲む。
体の中をアルコールが巡り、水がそのあとを追いかけていくような感覚です。
翌朝の自分への、ささやかな「仕込み」だと思えば、少し楽しくなります。
お酒を楽しむことと、翌日を大切にすることは、相反するものではありません。ほんの一口の水が、両者を穏やかに繋いでくれる。
そんな夜の知恵があるように思います。
次回予告
次回は、飲酒の前に水を飲む、いわゆる「プリウォーター」について考えてみたいと思います。
体内の準備を整えることで、翌朝の快適さはどこまで変わるのか。また一晩、静かな実験をしてみようと思います。