第一話:真昼の残響

休日の昼、外に出た瞬間、世界はまるで光の中に沈んでいるよう。

空は深く澄み渡り、どこまでも抜けるような青。そこに漂う雲は真っ白で、輪郭は鋭く、まるで紙に切り抜かれたようです。太陽は高く、何もかもを包み込むように輝き、遠くの景色さえ揺らめかせておりました。

アスファルトの上には、熱が漂い、わずかに立ち上る陽炎が足元をぼやけさせます。一歩ごとに靴底から伝わる熱が増し、背中にまで日差しの重みがのしかかるようでした。

二日酔いの日ではございません。むしろ体は軽く、眠気も抜け、外を歩くことが心地よい朝でした。

しかし、強烈な夏の光は、短い時間で喉の奥を乾かしてまいります。

歩き始めは気にも留めなかった渇きが、やがてはっきりと存在感を帯びてくる。額にじわりと汗が滲み、それがこめかみを伝って落ちる頃、渇きは「飲みたい」という小さな欲望から、「今すぐにでも」という確かな衝動へと変わっていきました。

住宅街を抜け、電線の下をくぐり、蝉の声を背中で受けながら、細い歩道を進みます。信号待ちで空を仰げば、白い光が瞼の裏まで染み込み、そのまま頭の奥まで温めてくるよう。太陽はただ明るいだけではなく、こちらの呼吸や歩調までも支配してくるような気がいたします。

曲がり角をひとつ過ぎたところで、視界の奥にコンビニが見えました。自動ドアが開くと、冷房の冷たい空気が一気に体を包み込み、火照った肌の上で氷を溶かすように、熱をやわらげてくれます。

店内は外とはまるで別世界。白い蛍光灯の光は柔らかく、真昼の太陽のように容赦なく刺さることはありません。そのやさしい光の中で、まっすぐに冷蔵ケースへ向かいます。透明なガラス越しに並ぶ缶ビールは、どれも銀色や金色の光沢を放ち、その表面には小さな水滴がびっしりとついておりました。その水滴がケースの冷気でゆっくりと滑り落ち、缶の下に小さな水たまりを作っている様子が、妙に鮮やかに目に焼きつきます。

本来なら、常識的に考えて水を買うべきなのでしょう。しかし、この時の渇きは、ただの水分不足とはまったく別の種類。頭のどこかで「この状況はビールでこそ満たされる」という声が聞こえるのです。

それは単なる欲ではなく、光と熱と汗が導き出した、ある意味で必然の結論のように思えました。

冷蔵ケースから一本の缶ビールを取り出すと、その冷たさが指先を強く刺激します。会計を済ませ、再び外へ出れば、太陽は先ほどよりもさらに強く降り注いでおりました。缶を開けると、軽やかな「プシュッ」という音が、耳の奥で心地よく響きます。その瞬間、ビールの香ばしくも爽やかな香りが、真昼の熱気の中でふわりと広がるのです。

一口、喉に流し込めば、冷たさが喉の壁をすべるように落ちていき、胸の奥まで一気に涼しさを運んでまいります。そしてその直後、口の中に広がるほのかな苦味と麦の香りが、太陽の強さと溶け合うように体全体を包み込みます。立ち止まり、空を仰げば、真昼の青さがまぶたの奥まで満ちていくようでした。

この日差し、この渇き、そしてこの一杯。

それらは偶然ではなく、夏という季節がもたらす、完璧な組み合わせです。

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